【7月21日 AFP】日焼けに憧れる多くのドイツ人は、今もスペインやフランスのビーチで裸になり日光浴を楽しんでいるが、国内の「ヌーディズム」(裸体主義)人気は下降線をたどっている。

 1世紀近くの間、日光をあがめるドイツ人たちは、滅多にお目にかかれない夏の日差しを目にした途端、服を脱ぎ去ることで知られてきた。とりわけ、自由な風潮が社会を覆った1970年代以降は服だけではなく、親の世代の厳格な道徳観もかなぐり捨てたヌーディストたちがビーチや湖、そして街中の公園を裸で歩き回った。特に当時、共産主義国だった東ドイツでヌーディズムは人気となり、極めて抑圧された社会の中で個人の自由を表現する限られた手段としてもてはやされた。

 だが、ドイツ語で「自由な身体文化」を意味する「フライケルパークルトゥア(Frei-Koerper-Kultur)」を略して「FKK」と呼ばれていたヌーディズムを取り巻く状況は変化している。

 ドイツ・ヌーディストクラブ連盟(Deutsche Verband fur FreikorperkulturDFK)のクルト・フィッシャー(Kurt Fischer)会長はAFPの取材に対し「社会は変わりつつある」と嘆いた。活動的な70歳代のフィッシャー会長は、会員登録者名簿を数え上げ、国内のヌーディストクラブ145団体の会員数が毎年2%ずつ減少し、今では約4万人になってしまったと説明する。

■ヌーディストクラブは高齢化

 今やヌーディズム愛好家たちは急速に高齢化し、年齢層は50歳代から60歳代が最も多く、25歳以下の会員は珍しくなった。

 フィッシャー会長は人々の働き方が一変してしまい、不規則な労働時間のせいでFKKのクラブや連盟の活動に時間を割くことが難しくなったと指摘する。「20年前はほぼ皆、週末は休みだったが、今はほとんど全ての仕事で融通が要求される上、休みを決めるのは雇い主だ。独自の組織形態を持ち、時間の決まっているイベントに人を集めたい団体にとって、これは問題だ」

 ボーリングや卓球、さらにはギリシャでのセーリングなど、さまざまなアウトドア活動や大会の機会を提供しているFKKだが、ここ数十年でFKKの活動にとってライバルとなる余暇の過ごし方も爆発的に増えた。「人々は何かに没頭したがらなくなった。この週末にはこれをやりたい、あの週末にはあれをやりたいといった具合だ」。これは両親たちの世代のように人前でトランクスやビキニを脱ぐことがほとんどない、若い世代にとりわけ当てはまる。その理由の一部は、集団アイデンティティーを表す重要な要素の一つが服装だと若者たちがみなしているからだ。