【7月11日 AFP】後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した状態で生まれながらも、早期治療の結果、数年間感染の兆候が確認されていなかった女児について、米国の医師チームは10日、再びHIVに感染していることが確認されたと発表した。

 米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious DiseasesNIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長は、「この子やその担当医ら、そしてHIV/エイズの研究機関にとって、非常に残念な事態だ」と述べた。

 身元が明らかにされていないこの女児は「ミシシッピ(Mississippi)の赤ちゃん」として知られている。2010年にHIV陽性の母親から生まれた直後、多量の抗レトロウイルス薬を30時間にわたり投与された。

 女児は1歳6か月まで薬の服用を続けた時点で、医師らと連絡がつかなくなったが、5か月後に再び病院を訪れた際、その間に薬を服用していなかったにもかかわらず、感染の兆候はなかったという。女児はその後も治療を受けず、2年以上の間ウイルスは見つかっていなかった。

 現在4歳の女児は、今月受けた定期健診で、血中に検知可能なレベルのHIVが見つかった。また、T細胞数の減少とHIV抗体の出現が確認され、体がウイルスと闘っていることやHIVが体内で再び活発に増殖していることが示された。

 ファウチ所長によると、女児に対する抗レトロウイルス薬による治療が再開されており、経過は順調だという。

 同所長は、「HIVに感染した乳児に対する抗レトロウイルス薬を用いた早期治療では、HIVに感染した細胞を完全に除去することはできなかったが、病気の進行を著しく抑え、抗レトロウイルス薬の長期にわたる服用を回避できる可能性があることが、ミシシッピの赤ちゃんの事例によって示された」と述べている。

 同所長はまた、今後の研究課題として、女児の体内のHIVが一時的に活動をやめた理由と仕組みを解明し、この休止期間を延長させることを目指す必要があると述べた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN