【7月15日 AFP】「シャネル(CHANEL)」のデザイナー、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は8日、新たな顧客たちを喜ばせる、若くてモダン、それでいてアジアの香りが漂うオートクチュール・コレクションを発表した。

 髪を立たせたボーイッシュなモデルたちは、サイクリングショーツと足首にリボンを結ぶタイプのフラットサンダルを履き、長いストラップのついたショルダーバッグを斜めがけして登場した。

 今回のコレクションで特徴的ともいえる若々しい雰囲気について質問されたカールは、年寄りっぽさに惹かれる客はあまりいないだろうとジョークを飛ばし、未来があるとしたら「こんな感じだ」と語った。

 カールが今回着想を得たのは、現代建築のパイオニアとも称されるル・コルビュジエ(Le Corbusier)だ。1930年代前半、コルビュジエは自宅アパートにシャンゼリゼ通り(Champs-Elysees)を望むテラスを作り、そのコンクリートの壁に暖炉と鏡を置いた。

 パリのグラン・パレ(Grand Palais)で開催された豪華なショーのセットは、シャープなラインと大きくて白い壁が印象的だった。ランウェイの両端に設置された巨大なドアがスライド式にオープンすると、18世紀の暖炉の上にコルビュジエ・スタイルの鏡が2つ現れた。

 今シーズン、カールは遊び心あふれるスカートやポインテッド・ショルダー、ファーのネックラインや刺繍などを用い、バロック様式を思わせるスタイルを数多く披露した。

 カールはショーの後、AFPの取材に対して「バロック要素とモダンなタッチというアイディアが気に入りました。コルビュジエのアパートはまさにそれを体現しています」と語った。

 コルビュジエのテラスは第二次世界大戦前に破壊されたが、長年にわたり多くの建築の本や雑誌に登場していた、とカールは言う。「それが今回のコレクションの象徴です―コンクリートとバロックの融合。コルビュジエとヴェルサイユ宮殿の融合とも言えるでしょう」

■新たな顧客層を意識したショーに

 上海から来たある顧客はコレクションを「若々しい」と表現し、ドレスを2着購入するつもりだと語った。 

 実際、「シャネル」のブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)ファッション・プレシデントは、長年の顧客たちが年を重ねるのと同時に、20代から30代の顧客が増えていると語った。こうした客層は独自性を求めて、「大切なイベントや自分へのプレゼントとして」オートクチュールを購入するという。

 また会場には、香港出身のWen Hsin Tsai Hongなどアジアからのゲストが多く見られた。Wenは、コレクションにはとりわけアジアの雰囲気が感じられたとAFPに語った。「モデルたちは他のショーよりも身長が低く、とても『アジア的』でした」

 フィナーレではカールが中国の歴史からヒントを得たドラマチックな演出を見せた。モデルたちが舞台の両端から歩いてきて、中央で交差する。それはまるで兵馬俑に命が吹き込まれたようだった。

 ウェディングドレスに身を包んだ妊娠中のモデルと一緒にランウェイに登場したカールは、ファッションフォトグラファーのマリオ・テスティーノ (Mario Testino)や米『ヴォーグ』誌のアナ・ウィンター編集長をはじめ、多くのゲストから喝采を浴びた。(c)Helen ROWE