【7月8日 AFP】米国の第3代大統領、トーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson)は立ったまま仕事をするのを好んだと伝えられているが、あれから200年以上が経過した今、米国では、職場で長時間座っていることの危険性を認識し、立って仕事をする人が増えている──。

 複数の研究によると、長時間座りっぱなしライフスタイルにより、腰痛や筋肉の退化、心臓病、糖尿病、大腸がんを患う可能性があるほか、早死にする恐れもあるという。

 米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のホームドクター(家庭医)、ロブ・ダノフ(Rob Danoff)氏は「私たちは早死にするために腰を下ろしている」と述べ、「1日の大半を座って過ごす。職場ではワークポテト族、家に帰ればカウチポテト族だ。この組み合わせは命取りだ」とAFPに話した。

 米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)は、米国の成人が1日平均7.7時間座った状態で過ごしていると指摘。他方、米オステオパシー協会(American Osteopathic Association)も、労働者の約70%が1日5時間以上座った状態にあると推計している。

 ダノフ氏は、座っている時間が長ければ長いほど、血液の循環が悪くなり、仕事後にジムに通う程度では、その影響は解消されないと説明する。

 米国医師会(American Medical Association)の内科専門誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン(Archives of Internal Medicine)」に掲載された研究によれば、早死にする確率は、1日に座ったままの時間が4時間の人を基準にすると、8時間の人は15%、11時間の人は40%、それぞれ高くなるという。

 米国医師会は2013年、長時間座ったままの状態でいることのリスクを正式に認め、職場の通常の机や椅子の代わりに、立ちながら仕事ができる机の他、トレッドミルやバランスボールを取り入れるなど、代替策を検討するよう呼び掛けた。

 この呼び掛けがきっかけとなり、米国では立って仕事をする人が増えているという。

 オフィス空間・家具を専門に扱うイリノイ(Illinois)州の企業、アプライド・エルゴノミクス(Applied Ergonomics)社長のジェフリー・メルツァー(Jeffrey Meltzer)氏は、「欧州では立って使うデスク(スタンディングデスク)は20年前くらいから注目されていたが、米国ではばかげたものとみられていた」と話す。しかし2013年には、スタンディングデスクの売り上げが50%増加し、大きな変化を感じているという。

 米首都ワシントン(Washington, DC)でスタンディングデスクを販売するRebel Deskの創業者の1人、キャスリーン・ヘール(Kathleen Hale)氏(34)によると、弁護士や大学の教授、医療関係者などの間では、スタンディングデスクのみならず、セットで使うトレッドミルの需要も高いという。

 ヘール氏は、立つ、歩く、座るといった動きを組み合わせることを勧める。「必要なら座ればいい。座ることは一休みすること。そう考えて欲しい」と述べている。(c)AFP/Fabienne FAUR