【7月2日 AFP】太陽から遠距離にある氷に覆われた彗星本体から、毎秒グラス2杯分ほどの水が失われていることが、最新の観測により明らかになった。欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)がこのほど発表した。

 ESAの彗星探査機ロゼッタ(Rosetta)は6月6日、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)にマイクロ波センサーを向けて観測を行った。その結果、太陽の周りを公転している同彗星はまだ太陽から5億8300万キロ離れた位置にあるにもかかわらず、水を毎秒300ミリリットル失っていることが分かった。

 35万キロ離れた場所から彗星の観測が可能となったのは、まさに技術的な偉業といえる。ロゼッタは10年間の宇宙飛行を経て、8月に実験機を同彗星に着陸させる予定だ。

 ESAはプレスリリースを発表し、彗星がまだ遠距離にある時点から、太陽による影響が及び始めることが目に見える形で示されたと説明している。

 ロゼッタに搭載されたマイクロ波観測装置(MIRO)を担当する、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(Jet Propulsion LaboratoryJPL)のサム・グルキス(Sam Gulkis)氏は「水蒸気が彗星から放出されていることを確認するのは分かっていたが、これほど早期に検出されるとは驚きだ」と語る。

「この割合では、彗星がオリンピックプールを一杯にするのに約100日かかるだろう。だが太陽に接近するにつれて、水の生成速度は著しく増加する」

 彗星は太陽の周囲を楕円型の軌道を描いて進む。太陽からの熱を受けて表面の氷が蒸発すると、ガス、塵(ちり)、凍結水でできた見事な「尾」ができる。

 2004年に打ち上げられたロゼッタは、8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に最接近して、同彗星が太陽の周りを進むのを追尾することになっている。

 ロゼッタ11月に、総重量100キロの冷蔵庫サイズの着陸機フィラエ(Philae)を彗星に投下する。フィラエは彗星表面に自身を銛で固定し、科学実験を行う予定だ。

 ESAによると、ロゼッタは6月30日の時点で、目的の彗星から7万2000キロ以内にまで到達しているという。

 宇宙学者によると「汚れた雪玉」と呼ばれることもある彗星は、太古の氷と塵が混ざり合って構成されており、45億年前に太陽系がどのようにして形成されたかについての手掛かりをもたらすタイムカプセルを形成しているという。

 一部の科学者らは、現在の地球の海水の大半と、地球上で生命を始動させた複雑な分子は彗星によってもたらされたのかもしれないと考えている。(c)AFP