【7月2日 AFP】海面に浮かび甲羅干しをすることで知られるエイは、実は自然界で最も深く潜水する生物の一種で、水圧で潜水艦が押しつぶされるほどの深海でも捕食行動がとれることが判明した。研究論文が1日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。

 米ウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic InstitutionWHOI)のサイモン・ソロルド(Simon Thorrold)氏率いる研究チームは、中部大西洋海域で、頭に2本の角があり、空に揚げるたこのような形をした魚のタイワンイトマキエイ(学名:Mobula tarapacana)15匹にデータ記録用の装置を取り付け、エイがどこに行くかを調べた。

 衛星経由でデータを送信する記録装置は、エイの行動を最長9か月にわたって追跡記録した。

 エイは海面近くをゆったりと泳ぐ魚というイメージがあるが、実際は最大水深1896メートルの水温3.6度しかない深海にまで潜水していることが、今回の調査で分かった。これまでに観察された魚による最深の潜水行動は、ジンベエザメの1926メートルだった。

 タイワンイトマキエイは海面で体温を上げ、蓄えた熱を用いて深海の低水温下で体の重要な機能を維持しているのではと研究チームは推測している。

 毎秒6メートル、時速にすると22キロという驚異的なスピードで海中を降下できることも、深海への潜行を可能にしている要因の一つだという。

 またタイワンイトマキエイの行動範囲は驚くほど広く、一日に最大49キロに及ぶことも判明した。

 今回の発見でその一部が明らかになったタイワンイトマキエイの生態だが、常食や生殖周期、深海の生態系への影響など、いまだに不明な点は多い。(c)AFP