■頭から爪先まで全身で応援

 この店から角を曲がったネイルサロンでは、応援するチームの色に爪を塗ろうとする女性たちが、料金の値下げ交渉をしている。ブラジルのシンボルカラーである黄、緑、青が最も人気が高い。リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)の巨大なキリスト像(Christ the Redeemer)か、ヒョウ柄の2種類から選べるシールマニキュアの料金は13ドル(約1300円)ほどだ。

 このネイルサロン「ネイルエクスプレス」のマーケティング責任者、マリナ・ジョルケビクスさん(28)は「試合のときに塗るだけじゃなくて、いつもネイルをこうしておきたいのよ。見かけもいいでしょう」と話す。

 代表チームをサポートする気持ちは示したいけれど、ジャージーは着たくないという女性のために、地元のファッションデザイナーたちもW杯グッズ作りに参加している。

 ファッション用品店の「マミー・デ・シルベイラス・エッセレ・ファッション」では、イタリアやオランダ、ロシアからの旅行客が26~35ドル(約2600~3500円)をしぶしぶ払いながら、ヒョウ柄やゼブラ柄プリントのブラジルカラーのタンクトップを買っていた。店主のシルベイラさんは、巨額のW杯開催費に抗議する一連のデモについて触れ「抗議行動やストライキはしていても、ブラジルには愛国心があふれている。みんな、目立つ格好をしてブラジルを応援したがっているのよ」と話した。

 国を愛する心は、ベッドルームにまで持ち込まれている。米国に本拠を置くNPO「DKTインターナショナル(DKT International)」は2月、家族計画とエイズ予防促進のため、ブラジルの国民的カクテル「カイピリーニャ」風味のコンドーム210万個を販売した。「プルーデンス(Prudence)」というブランド名で販売されたこのコンドームも、黄色い地に先端部分が緑色とブラジルカラーだ。3個入り1ドル40セント(約140円)で発売され、当初は売り上げるのに3か月はかかると見込んでいた85万個を15日間で完売した。

 DKTのブラジル支部代表を務めるダニエル・マルン氏は「外国人旅行客が安いお土産として買って帰ったのだろう。安全なセックスというメッセージとともに、楽しく満ち足りたセックスというメッセージを伝えることも大事だ」と語った。

 最もポップで安価なW杯関連の土産は、サンパウロ市内のにぎやかな「3月25日通り(Rua 25 de Março)」にある青空市場の露店で売られていた。ここでは、各国カラーの道化師帽やモヒカン狩りのかつら、前回南アフリカ大会の象徴となったアフリカの民族楽器ブブゼラのピアスなどが、5ドル(約500円)で売っていた。

 議会顧問を務めるマリアネ・ビセンテさん(27)は、山のように積まれたサッカーボール型の帽子をかき分けていた。先週のメキシコ戦では、ブラジルカラーの黄・緑・青のスパンコールが光るドレスを着て応援したという。ビセンテさんは「目立つ服を着なきゃ。頭から爪先まで、全身で応援しなくちゃ」と語った。(c)AFP/Laurent THOMET