【6月30日 AFP】アフガニスタン人の女性の一団が、山あいの坂道を走り抜けていく。通りすがりの男たちからじろじろと見られ、下品な言葉を投げ掛けられることもあるが、気にしない。彼女たちは、一昔前のアフガニスタン女性には考えられなかったスポーツ「サイクリング」を思う存分、満喫している。

 女性が自転車に乗っている姿は世界の大半では珍しくないかもしれないが、厳格なイスラムの道徳観により、サイクリングは女性に不向きだとみなされているアフガニスタンでは、奇異の目で迎えられる。

 サイクリングのアフガニスタン女子代表チームに所属する10人は、こういった性差別を乗り越え、時には身の危険さえ感じながら、日々特訓に励んでいる。2020年開催の東京五輪を目指していることはもちろんだが、さらに野心的な目標も視野に入れている。それは、もっと多くのアフガニスタン女性に、自転車に乗ってもらうことだ。

「私たちにとって、自転車は自由の象徴」と語るのは、チームの一員でアシスタントコーチも務めるマラヤン・シディーキ(Marjan Sidiqqi)さん(26)。「政治的表現のつもりで自転車に乗っているわけではない。乗りたいから、乗るのが好きだから乗っている。私たちの兄弟が乗れるのならば、私たちだって乗っていいはず」

 ある爽やかな朝、マラヤンさんに加え17~21歳の6人ほどの代表メンバーがサイクルパンツとヘルメットを着用し、首都カブール(Kabul)から隣町パグマン(Paghman)までの起伏のある道のりを訓練走行に出発した。

 チームは周囲から反感を買うことにも慣れてきた。「あばずれ」、「一族の恥さらし」、「家へ帰れ」など、侮辱的な言葉を耳にすることも多い。しかし、そのような態度を示されてもひるむことはない。その理由の一つは、思いがけない場所で声援を受けることもあるからだという。