■娘が実現してくれた夢

 パグマンへ向かう途中、あるメンバーの母親が黒ずくめの服装で通りへ出てきて、手を振ったり拍手をしたりしながら、熱烈に応援してくれた。その熱意は、ほとんどの親族には理解してもらえない。

「娘は私の夢を実現してくれた」。20歳の大学生フィロザさんの母親、マリアさんはこう語る。「私の両親は自転車に乗ることなど絶対に許してくれなかった。(自分が娘に)同じことをするわけにはいかない」。しかし親族や隣人には黙っておくつもりだ。「分かってくれるはずがないから」

 米軍が主導した13年前のアフガニスタン侵攻で旧支配勢力タリバン(Taliban)による政権が転覆して以来、アフガニスタンの女性たちが教育や医療を受ける機会は大幅に向上した。しかし保守的な考え方は根強く残っているため、男女平等など夢のまた夢だ。

 最近もカブール近郊でトレーニングを行っている際、こんな事件があった。バイクに乗った若い男3人が突然現れ、チームメートの1人の自転車に接触、転倒した際にマラヤンさんも巻き込まれ、背中に大けがをした。チームを引率していたアフガニスタン自転車連盟(Afghan Cycling Federation)会長のモハマド・サディク(Mohammed Sadiq)さんは激怒して男らを追いかけ、捕まえた1人を警察署へ突き出した。

 2003年に自分の娘が自転車に興味を示したことから女子チームを結成したというサディクさんは、メンバーの安全を常に心配しているという。アフガニスタンに駐留する国際部隊は2016年までに撤退する予定のため、不安はさらに大きく募っている。「タリバンが戻ってきたら、最初に犠牲になるのは女性の権利だ」

 訓練走行を終え、パグマンの川べりでチームが休憩していると、一人の男性がもの珍しそうな表情でマラヤンさんに近寄ってきた。「あなたも山で自転車に乗っているのか」と尋ねられたマラヤンさんは、ためらいがちに「そうです」と言った。しかし「皆は男子か、女子か?」と聞かれた時には強気の顔で「女子です」と胸を張って答えた。(c)AFP/Anuj CHOPRA