【6月26日 AFP】ドイツのグレタ・タウベルト(Greta Taubert)さん(30)は1年間にわたって、私たちの暮らす消費社会を放棄した──。経済システム崩壊後の生活がどのようなものになるのかを体験したかったというタウベルトさんは、一銭も使わずに食べ、飲み、衣服を調達した。

 12か月間の非消費生活の後に最初に欲しかった物は何だったのか。ドイツ東部ライプチヒ(Leipzig)のカフェで取材に応じたタウベルトさんは、「タイツ」と即答し、「それとトイレタリー(身だしなみ用品)もね」と付け加えた。

 タウベルトさん、自家製のデオドラント、乳液、歯磨き粉を作ったという。全て100%オーガニックだ。「自分でシャンプーも作った。けれどネアンデルタール人みたいになって、友人からは『やり過ぎ』と言われた」と笑顔を見せた。

 フリーランスジャーナリストのタウベルトさんは、1年間にわたって古着交換所でスカートやズボンを交換し、地域運営の菜園でキャベツやジャガイモを育てた。

 休日には1700キロ以上ヒッチハイクしてバルセロナ(Barcelona)も訪れた。

 この1年間の体験を基にタウベルトさんは2月、書籍「Apokalypse Jetzt!」を発表した。Apokalypse Jetzt!はフランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)監督の『地獄の黙示録(Apocalypse Now)』(1979年)のドイツ語タイトルだ。

■「もっと、もっと、もっと」のスローガン

 タウベルトさんが消費生活から離れたのは、ある日曜の午後、祖母の家を訪問した際の出来事がきっかけとなった。

 その日、祖母は豪華な昼食のわずか数時間後、ハムとチーズのカナッペ、アップルパイ、チーズケーキ、クリームパイ、バニラビスケット、それにコーヒーをテーブルに並べてくれたという。「私が『牛乳がほしい』と言うと、祖母は食卓にチョコレート味、バナナ味、バニラ味、ストロベリー味の粉末トッピングを置いてくれた」と当時を振り返った。

「私たちの経済システムは無限の成長という見通しを基盤としている。けれど世界の環境は有限」とタウベルトさんは著作で述べ、「『もっと、もっと、もっと』のスローガンでは、私たちはあまり先に到達できないだろう」と続けている。