【6月23日 AFP】イラクでは、イスラム教スンニ(Sunni)派武装勢力の戦闘員らがシリアとの国境検問所を制圧した後、西部地域に進攻を続け、22日までに複数の町を制圧した。一方、エジプトのカイロ(Cairo)に到着した米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は22日、宗派間抗争を克服するようイラク指導者たちに呼びかけた。

 地元住民らの話によると、スンニ派の武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIL)」率いる武装勢力は、21日にカイム(Al-Qaim)の国境検問所を掌握した後、ラワ(Rawa)とアナ(Ana)の町を制圧した。

 イラク政府は、政府軍が2つの町から「戦術的後退」を行ったとしているが、これら複数の町の支配は、隣国シリアのユーフラテス(Euphrates)川沿いの広大な渓谷地域を支配している武装勢力にとって、戦略的ルートを開くものとなる。

 イラク情勢をめぐっては、4月の総選挙以来ほとんど進んでいない新政府の樹立を急がせるよう、米国がアラブ諸国がイラクの指導者らに圧力をかけている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は20日の米CNNの番組で、「包括的な民主主義を実現する機会をイラクに与えている。宗派間の違いを乗り越え、子どもたちにより良い未来をつくる機会だ」と述べ、「残念なことに、われわれが目にしているのは、信頼の崩壊だ」 と続けた。

 ISILがカイムの国境検問所を掌握したことで、シリアとの公的な国境検問所3か所のうち、連邦政府が掌握する検問所は1か所だけとなった。残り1つはクルド軍の制圧下にある。

 他方、イラク政府軍はスンニ派武装勢力の掌握する都市ティクリート(Tikrit)に空爆を開始、地元住民によると、少なくとも7人が死亡したという。また国防省も北部の都市モスル(Mosul)への空爆を発表している。(c)AFP/Prashant RAO