■まるで「ゲーム・オブ・スローンズ」?

 アルスアガ氏は、ジョージ・R・R・マーティン(George R.R. Martin)氏原作の米人気テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」を引き合いに出し、記者団に次のように語った。「中期更新世におけるユーラシアおよびアフリカ大陸でのヒト族の進化はおそらく、ゲーム・オブ・スローンズのシナリオで説明できると考えている。あの有名な番組の中で描かれているように、欧州の中期更新世には単一民族による統一王国などは存在せず、異なる地域に暮らす多数の『部族』が頻繁に領土争いを繰り返していた」

 そうした集団の中には、同じ拡大家族の成員など近縁関係にあるものも、全く異質のものもあった。古代人もしくは原人の部族の中で孤立した集団では、置かれた環境に自分たちの特徴を適応させる長いプロセスが進んだ。

 アルスアガ氏は「人類の進化は、大陸全域が同じペースで徐々にゆっくり進化するというものではない。ネアンデルタール人が持つ一連の特徴は全て同じ速度で進化したわけではないことが現在、明らかになっている」と説明する。

■人骨群は失脚集団の埋葬地か?

 スぺインの遺跡の人骨は、他の原人によって何らかの形で「地位を奪われた」原人かもしれないとアルスアガ氏は述べている。「彼らは自然災害や地質学的な災害で死んだのではない。他の人類によって積み重ねられた可能性があると考えている」という。

 遺跡の骨片の1つから採取されたミトコンドリアDNAは、これらの人々がネアンデルタール人ではないことを示している。またこれらの人骨は、ネアンデルタール人が存在していたことが知られている時代よりも20万年ほど前のものであることも明らかになっている。

 DNAを抽出するための努力をさらに重ねれば、彼らに死に至らせた状況の解明が進む可能性がある。「この人骨群の起源は、考古学の最大の謎と呼ばれるかもしれない」とアルスアガ氏は述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN