■カシージャスに突きつけられた厳しい現実

 通算500試合出場が近づくレアルで数々のタイトルを獲得し、2008年の欧州選手権(UEFA Euro 2008)制覇で44年にわたるスペインの主要大会無冠に終止符を打ったとき、カシージャスは頼れる守護神だった。4年前の南アフリカでも、オランダとの決勝を含め、ゴール前に立ちはだかって連続無失点に貢献している。

 2012年の欧州選手権連覇で、スペインは史上初めて主要国際大会の3連続優勝を達成したチームとなり、今大会の予選も難なく通過した。しかしながらそのなかで、スペイン代表の黄金世代の数人については、魔法が解けたのではないかと疑問符が付き始めていた。

 ジョゼ・モウリーニョ(Jose Mourinho)監督によってレアルで初めてレギュラーをはく奪されたカシージャス自身も、そうしたメンバーの1人だった。

 しかしデル・ボスケ監督は、ホセ・マヌエル・レイナ(Jose Manuel Reina)を一度くらいは試すべきではないかと周囲が騒がしくなるなかでも、愛弟子にこだわった。

 スペインは初戦でオランダのハリケーンに吹き飛ばされたが、いつものようにキャプテンマークを巻いたカシージャス1人だけが、精彩を欠いていたわけでは決してない。

 マラカナン・スタジアム(Maracana Stadium)で再び完敗したこの日も、及第点以下だったのはカシージャス1人ではなく、チーム全体として、一時代が去りつつあることを感じさせた。

 試合終了のホイッスルの後、背中を丸めてゆっくりとハーフウエーラインに向かうその姿は、カシージャスが厳しい現実と向き合っていることを、どんな言葉以上に雄弁に物語っていた。

 1年前のコンフェデレーションズカップ(Confederations Cup 2013)で大敗した時と同じマラカナンで、スペインはこの日、完膚なきまでに打ちのめされた。

 カシージャスはすでに加齢という船に乗り込んでおり、その船ははつらつとしたオランダとチリを相手に持ちこたえることはできなかった。

 マドリード(Madrid)郊外のモストレス(Mostoles)出身のカシージャスにとって、かすかな慰めがあるとすれば、それはまだ船を降ろされてはいないことだろう。(c)AFP/Chris WRIGHT