【6月19日 AFP】近くて遠い、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)──熱戦が繰り広げられるスタジアムの外には、チケットを手にした陽気な観戦客たちをねたましげににらむ人々の姿がある。欲しくてたまらないチケットを入手できなかったサッカーファンたちだ。彼らは、会場の中に入るためなら、どんなことでもやってのける。

 違法なチケット販売業者に数百ドル(数万円)を払うこともいとわない。偽造チケットをつかまされ、スタジアムの入り口で入場を拒否されることもある。破れかぶれでスタジアムの壁を飛び越える者すらいる。

 法律を学ぶブラジル人学生、イゴル・ゲハ(Igor Guerra)さん(21)は15日夜、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のマラカナン・スタジアム(Maracana Stadium)に吸い込まれていく大勢の観客の前にアルゼンチン代表チームのユニホーム姿で立ち、「チケット買います」と3つの言語で書かれたプラカードを掲げていた。

 アルゼンチン代表のリオネル・メッシ(Lionel Messi)選手のプレーを見るためなら、250ドル(約2万5000円)まで金を出すつもりだった。それが、国際サッカー連盟(FIFA)が眉をひそめる違法行為だということは知っていた。だが「僕だって、FIFAがやることの多くは気に入らないんだ」と、ゲラさんは肩をすくめる。

 FIFAはチケットの転売対策に力を注いでいる。チケットには一枚一枚購入者の氏名が記載され、譲渡は認められていない。唯一の転売方法は、FIFA公式のチケット売買システムを経由するものだけだ。

 ただ、たいていの場合、スタジアムの入り口で観戦者の身元確認が行われることはない。

■悪知恵でVIPチケット入手、強行突入も

 アルゼンチンのコルドバ(Cordoba)からブラジル・サンパウロ(Sao Paulo)まで2500キロを運転してきたアルゼンチン人の4人組は、悪知恵をはたらかせてブラジル対クロアチアの開幕戦にまんまと入り込むことに成功した。

 4人は5つ星ホテルに堂々と入っていき、FIFAパートナー企業の関係者だとフロント係に信じ込ませ、あっさりVIPチケットを手に入れた。「(VIP席には)すし、シャンパン、そして(元ブラジル代表の)ロナウド(Ronaldo)がいた」。4人組の1人はこう語り、携帯電話で撮影したロナウドとの記念写真を披露した。「マラドーナとだって会えたかも」

 しかし4人は、履いていたビーチサンダルが原因で偽者と発覚し、ブラジル戦の途中でスタジアムを放り出された。アルゼンチン対ボスニア・ヘルツェゴビナの試合は、スタジアム近くのバーでテレビ観戦したという。