■フィルム信仰はノスタルジー?

 しかし、1948年から続くパリ最古の劇場「スタジオ28」を経営するアラン・ルルー(Alain Roulleau)氏は、こうしたフィルム信仰を「ノスタルジー」だと切り捨てる。すでに大半の劇場が35ミリ映画の公開をやめてしまったというのだ。

 芸術家の集まるモンマルトル(Montmartre)地区にあるスタジオ28には、ジャン・コクトー(Jean Cocteau)がデザインした照明や赤い階段があり、古風な雰囲気が漂う。

 だが映写室に入れば、そこは近代的な世界だ。 ルルー氏は4年前にデジタル映写機の導入を決めた。初めてデジタルの映像を見たとき、その画質に「泣きそうになった」と語る。「ひどく冷たく、完璧すぎて、まったく雰囲気がなかった」

 しかし、幸いなことに画質は改善され続け、35ミリの映画は昨年は2本しか公開しなかったという。

「35ミリは新しいときは完璧だが、2週間もすればスクリーンに黒いシミが見えるようになる」と、同氏は語る。「デジタルなら、公開初日から6か月後の最終日まで同じ画質だ」

■デジタルは製作者にとって経済的

 ニューヨーク(New York)のデジタル・フィルム・アカデミー(Digital Film Academy)の創設者であるパトリック・ディレンナ(Patrick DiRenna)氏は、費用をかけずに映画製作を始めることができ、新人監督の財布にやさしいことから、デジタルへの移行は自然な流れだと指摘する。

「問題は画質レベルが少しだけ落ちることだが、それはやがて改善されるし、引き換えに私たちは自由を手に入れる。アーティストたちがやりたい仕事をできるようになるのだ」

 ディレンナ氏によれば、デジタルカメラで映画を撮影するのは「大理石の代わりに粘土に彫刻を施す」ようなものだ。監督は「満足するまで」撮り直し続けることができる。

 さらに同氏は、タランティーノ氏もいつかは考えを変えるだろうと話す。

「タランティーノのような偉大なアーティストはたいがい、新しいものに抵抗感を示すものだ」

(c)AFP/Helen ROWE