【6月17日 AFP】(一部更新)タイで前月起こったクーデターで軍が全権を掌握したことから、不法労働者に対する厳しい取り締まり強化を恐れて18万人近くのカンボジア人が17日までにタイを離れ帰国した。

 タイと国境を接するカンボジア北西部バンテイメンチェイ(Banteay Meanchey)州のポイペト(Poipet)の国境検問所には、タイ軍のトラックやバスで国境を越えてき多数のカンボジア人が降り立った。帰国した人々は無料で配給される食事を受け取り、それぞれの最終目的地に向かった。

 同州のコー・サム・サラウット(Kor Sam Saroeut)知事によると、タイから帰国したカンボジア人の数は17日朝までにわずか1週間で15万7000人に達した。カンボジア人労働者たちの多くは、労働許可を持たずにタイに働きに来ているため「タイ当局が家にやって来て、逮捕されたり、逃げれば撃たれたりするのではないか」と恐れているという。

 タイでは複数の産業分野で外国人労働者が重要な役割を果たしているが、正規の労働許可を持っていない人々も多い。タイの暫定軍事政権は不法就労外国人の逮捕と強制送還を予告しており、大量のカンボジア人がタイを出国する事態となっている。

 5月22日にクーデターで全権を掌握したタイ軍の報道官は前週11日、軍政は不法滞在者を「脅威」とみなしており、逮捕や強制送還を辞さないと宣言した。

 しかし、その2日後にタイ外務省は、陸軍がカンボジア人労働者の強制送還を行っているという「うわさ」を否定。さらに15日には「タイ軍事政権の国家平和秩序評議会(NCPO)は、カンボジア人労働者に対する取り締まりの命令など出していない」とするセク・ワナメティ(Sek Wannamethee)報道官の言葉を引用した声明を発表している。

 声明によると、うわさが広まった結果、カンボジア人の不法労働者たちは「自ら本国への送還を望み、自主的にタイ当局に出頭している」という。これらの人々が帰国する手段をタイ入国管理局が提供していると説明している。(c)AFP/Suy SE