■イラクからシリアにまたがるイスラム国家構想

 イラクで最も強力な武装勢力のISILは、シリアの反政権勢力の中でも重要な位置を占めている。今年4月には、イスラム国家建設を掲げ、イラクのニナワ州と境を接するシリアのデリゾール(Deir Ezzor)県で軍事作戦を開始した。

 バグダッドのムスタンシリヤ大学(Mustansiriyah University)のアジズ・ジャブル(Aziz Jabr)教授(政治学)は、「武装勢力の目標は、モスル、サラハディン州、ディヤラ(Diyala)州、アンバル州、それにシリアのデリゾール県とラッカ(Raqa)県を含むイスラム国家の建設だ」と、述べる。またジャブル氏は、「ニナワ州などの陥落は、イラクの国家安全保障に対する重大な脅威だ」と付け加えた。

 ワシントン近東政策研究所(Washington Institute for Near East Policy)のマイケル・ナイツ(Michael Knights)特別研究員は、「(イスラム過激派は)シリアのラッカのような恒久的な解放地区をイラク国内にも欲しがっている」と指摘する。シリア北部のラッカ県の県都ラッカは、武装勢力の支配下にある。

 ナイツ氏は、「(武装勢力は)現在、これまでより野心的な地域制圧型の作戦に移行している。これは危険な戦術だが、これまでのところ効果を上げている。今月モスルなどで実施された一連の作戦は、ISILの新しい攻勢の始まりだと思われる」と述べた。(c)AFP/W.G. Dunlop