【6月11日 AFP】キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒──異なる三つの宗教の信者が一つ屋根の下で祈る。そんな画期的なプロジェクトが、それぞれの宗教の聖職者たちの提唱によって、ドイツの首都ベルリン(Berlin)で進められている。建設予定地は市中心部のピーター広場(Petersplatz)。2018年までに完成予定だ。

 教会でもなく、シナゴーグでもなく、モスクでもない。それぞれの要素が少しずつ組み込まれたこのセンターは今「祈りと学びの家」と呼ばれている。世界に類を見ない宗教施設になるだろうと提唱者たちはいう。

 この4400万ユーロ(約60億円)規模のプロジェクトの目的は、異なる宗教間の対話の重要性を示すことに加え、多文化都市ベルリンを映し出すことだ。2010年の公式統計によれば、ベルリン市の人口340万人のうち約19%がプロテスタント、8.1%がイスラム教、0.9%がユダヤ教の信者だ。一方、60%以上がどの宗教にも属していないと回答している。

 三つの宗教が出会う場所として、この地が選ばれたのは偶然ではない。

 プロジェクトを進める協会にキリスト教プロテスタントの代表として加わるローランド・シュトルテ(Roland Stolte)氏によると2007年にこの地で、中世以降の異なる時代に建っていた四つの教会の土台が発掘された。最後の一つは19世紀半ばに建造されたもので、高さ100メートルの尖塔があったが、第二次世界大戦で損壊した後、1960年代に旧東ドイツの共産主義政権によって取り壊された。

 以後、駐車場となっていた敷地を、ベルリン市当局が地元のプロテスタント社会に返還した。「私たちはこの地を再生したかった。もう一度教会を建てるのではなく、ベルリンの今日の宗教生活を表すような建物によって」とシュトルテ氏はいう。

 またグレゴール・ホーベルク(Gregor Hohberg)牧師は、プロジェクトの立ち上げ段階から、イスラム教徒とユダヤ教徒にも参加してもらうことが重要だったと振り返る。「キリスト教徒が建てた場所に、後からユダヤ教徒とムスリム教徒が加わるのではなく、最初から宗教間交流の事業にしたかった」