【6月11日 AFP】サッカー元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)が異質な悪玉とみなされるのとは対照的に、ジネディーヌ・ジダン(Zinedine Zidane)は、フランスの模範であり、象徴であるとみられていた。

 イタリアと対戦した2006年W杯ドイツ大会決勝は、フランス史上最高の選手であるジダンが現役を引退し、1998年のフランス大会に続き2度目のW杯優勝を飾るために絶好の舞台だと思われた。

 ジダンの先制点でフランスの立ち上がりは順調だったが、イタリアのマルコ・マテラッツィ(Marco Materazzi)に同点ゴールを許すと、激しいぶつかり合いの様相を呈してきた試合は延長戦にもつれた。

 マテラッツィは、意図的に暴言を吐いて相手を挑発するなどセンターバックとして型通りな守備をする選手だったが、ついにその策で「得点を稼いだ」。ジダンは、姉を侮辱する発言に我慢できず、延長10分にマテラッツィの胸に頭突きを食らわせたのだ。

 即座にレッドカードが出され、ジダンはやるせない表情でピッチを去り、無表情のレイモン・ドメネク(Raymond Domenech)監督の横を通り過ぎた。そして、W杯タイトルの行方は先がみえない状況となったが、PK戦の末にイタリアが勝利した。

 大会直後にフランスのメディアが、こぞってジダンを非難する一方、仏レキップ(L' Equipe)紙は切実な態度で、同選手を模範として崇めていた子供たちに対し、フランス国民は何と言うべきかを問いかけると、当時のジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領は、大局を見据える発言をした。

 シラク元大統領は、「この国には、ずっと誇りにしてきた類まれなる才能や素晴らしい闘志がある。それらは、困難な時期だけでなく、栄光の時期にも己の力となった」と述べた。

 ジダンは自身の過去について、すでに終わったことだと述べているが、4年が経過してもパトリック・バチストン(Patrick Battiston)とハラルト・アントン・シューマッハ(Harald Anton Schumacherq)のように、マテラッツィと和解することは論外だとしている。

 ジダンは、米スポーツ専門チャンネルESPNに対し、「謝るくらいなら死んだほうがましだ」と語っている。(c)AFP