【6月8日 AFP】パキスタンの5児の母、グルシャン・ビビさんは、リオネル・メッシ(Lionel Messi)が誰か全く見当が付かないし、自国代表チームが出場しているわけでもないが、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)の開幕が待ち遠しい──彼女と同僚たちが、大会で使われるサッカーボールを作ったからだ。

 12日にブラジル・サンパウロ(Sao Paolo)で行われるブラジル対クロアチアの開幕試合で、グルシャンさんたちがパキスタン東部のシアルコット(Sialkot)にあるフォワードスポーツ(Forward Sports)の工場で作ったボールが使われる可能性は高い。

■女性9割のパキスタンの工場、1個40分

 W杯公式球ブラズーカ(brazuca)の製造ラインでは、ヘッドスカーフを身につけ、顔を隠した女性たちがきびきびと作業をしている。

 プロペラ型の平らな白いポリウレタンに、ブラズーカの特徴的な明るい色が加えられ、ゴム製の空気袋にパネルがのり付けされる。縫い目には特別なシーリング剤が施され、専用の球体クランプで熱と圧力が加えられて正しい形に矯正される。また熱によりボンド剤が活性化し、ボールはしっかりと一つにまとまる。

 平らなパネルからボールを作るまでの全工程にかかる時間は40分ほど。不純物がボールに混入しないためには速度が重要だ。工場では1時間に100個のボールを作っている。

 ブラズーカのラインで働く作業員の90%は女性だ。女性は家庭にいるべきだという考えが根強いパキスタンでは異例の比率だが、フォワードスポーツのカワジャ・マスード・アクタル(Khawaja Masood Akhtar)最高経営責任者(CEO)によると、女性の方が男性よりもきちょうめんで熱心だという。