【6月5日 AFP】英ロンドン(London)で4日、エリザベス英女王(Queen Elizabeth II、88)が英議会で開会演説を行うため国会議事堂のあるウエストミンスター宮殿(Palace of Westminster)に向かう際に、初めて新しい王室馬車を披露した。

 英国で王室馬車が新造されるのは過去100年で2台目。6頭立ての新しい馬車には、1000年から現代までの英国の歴史が込められているという。

 この英王室専用馬車「ダイアモンド・ジュビリー・ステート・コーチ(Diamond Jubilee State Coach)」は全長およそ5.5メートル、高さ約3メートル、重さ3トンで、オーストラリアの馬車職人ジム・フレックリングトン(Jim Frecklington)氏が豪シドニー(Sydney)郊外のマンリー(Manly)にある工房で、約10年かけて制作した。同氏は「これまで作られてきた、どの王室馬車とも違う。1000年近い英国の歴史が詰め込まれている」と、英国放送協会(BBC)に説明している。

 黄金の葉の彫刻で飾られた車体の木材には、1545年にフランスとの海戦で沈没した英国王ヘンリー8世(Henry VIII)の旗艦「メアリー・ローズ号(Mary Rose)」の船体の一部や、アイザック・ニュートン(Isaac Newton)が万有引力を発見するきっかけとなったリンゴの木が用いられている。

 屋根の上に取り付けられた王冠は、1805年の「トラファルガーの海戦(Battle of Trafalgar)」で英国艦隊を率いたネルソン提督(Admiral Horatio Nelson)の旗艦「ビクトリー号(HMS Victory)」の船体の樫材から掘り出された。ネルソン提督は、この時の戦いでビクトリー号の船上で戦死している。また、カメラが設置されていて、沿道の人々の様子を撮影できる。

 内装を飾るのは、全英各地の史跡や由緒ある団体から贈られた品々だ。例をあげると、窓枠や羽目板の素材はカンタベリー大聖堂(Canterbury Cathedral)やロンドンの英首相官邸(10 Downing Street)、ウェールズ(Wales)にあるカーナーボン城(Caernarfon Castle)、20世紀初頭の探検家ロバート・スコット(Robert Scott)とアーネスト・シャクルトン(Ernest Shackleton)が南極遠征で滞在した小屋などから集められた。

 ほかにもウエストミンスター寺院(Westminster Abbey)やロンドン塔(Tower of London)、ケンジントン宮殿(Kensington Palace)、セントポール寺院(St Paul's Cathedral)、スコットランド(Scotland)にあるエディンバラ城(Edinburgh Castle)などの木版も使われている。

 また、デザインには第2次世界大戦中に活躍した英空軍の爆撃機「ランカスター(Lancaster)」や戦闘機「スピットファイア(Spitfire)」「ハリケーン(Hurricane)」の部品が組み込まれた。

 歴史的な品々が盛り込まれた一方で、油圧式安定装置やパワーウインドー、エアコンなど現代の技術も装備。新しい馬車でウエストミンスター宮殿に向かったエリザベス女王と夫のフィリップ殿下(Prince Philip、92)も、乗り心地には満足しているようだった。(c)AFP/Robin MILLARD