【6月4日 AFP】国連(UN)の食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)は3日、世界の森林生物種の半数が気候変動や農地開発により絶滅の危機に直面しているとの報告書を発表した。この中でFAOは、これら生物種の管理向上を目的とした「緊急対策」を呼び掛けている。

 FAOが初めて実施した森林の遺伝資源に関する世界規模の調査では、ブラジル、インドネシア、ナイジェリアでの森林縮小が最も速い速度で進んでいると指摘された。

 FAOのエドアルド・ロハス・ブリアレス(Eduardo Rojas-Briales)林業局長は、声明の中で「森林は、人類全体の生存と健全な暮らしに不可欠な食物、物品、機能を提供している」と述べ、「これらの恩恵はすべて、世界の森林に蓄積された豊富な遺伝的多様性の保護に依存しているが、この多様性は今、ますます拡大する危機に直面している」と続けた。

 FAOはまた、報告されている生物種と亜種8000種の約半数が絶滅危惧種と考えられることを明らかにしている。

 同報告書は、1990年から2010年の間に森林地帯の大半を失った国として、ブラジル、インドネシア、ナイジェリア、タンザニア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、ミャンマー、ボリビア、ベネズエラ、オーストラリアの10か国を挙げている。

 FAOによると、葉菜類、蜂蜜、果物、種子、木の実、根菜、塊茎、キノコなどの森林産物の生産性と栄養価の両面は、生物多様性によって高まるという。

 さらに遺伝的多様性は、森林を病害虫から守り、森林が「気候変動を起因とするものを含む、環境条件の変化に適応」できるようにするとFAOは述べている。

 FAOは、生物多様性の重要性に対する認識の向上および侵入生物種に対する取り組みをさらに強化するとともに、「遺伝子的に適正」な樹木の種子が確実に得られるようにするための国家的な計画を策定する必要性を呼び掛けている。(c)AFP