【6月3日 AFP】サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)が間近に迫る中、開催国では巨額の費用投資に反対するデモが各地で続いている──同大会のコストについては110億ドル(約1兆1000億円)を超えるとされており、国際的なスポーツイベントの開催が投資に見合う経済効果があるのかという昔ながらの論争が再浮上している。

 一部暴徒化したことも報じられたデモでは、参加者たちは教育や保健制度、公共インフラに投資した方が国民の生活が向上すると訴え続けているが、同国政府は、W杯開催で投資額を上回る経済効果がもたらされると真っ向から主張している。

 ビニシウス・ラジェス(Vinicius Lages)観光相はAFPに「W杯は経済問題の解決策ではなく、国が発展するための触媒。国内のインフラ整備の大きな要因になった」と述べ、W杯による経済効果は14年全体で約136億ドル(約1兆3900億円)に上ると見込んでいるとした。

 ブラジル政府は、W杯観戦に訪れる海外からの観光客を60万人、国内の観光客を310万人と予想。1人当たりの支出については2500ドル(約25万円)と試算している。

 米コンサルティング大手アーンストアンドヤング(Ernst and Young)などによる12年のレポートは、W杯と16年夏のリオデジャネイロ五輪で、360万人分の雇用創出が見込まれ、19年までに年4%の経済成長が続くとの見方を示していた。

 しかし専門家の見解はさまざまだ。米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's Investors Service)は3月発表のレポートで、11年から続く経済低迷の影響を受け、W杯はブラジル経済にほとんど影響を及ぼさないと分析。同社シニア・アナリストのバーバラ・マトス(Barbara Mattos)氏は、一時的な売上増だけで実質的な利益増にはつながらないとした上で、「交通機関の乱れや混雑、休業がビジネスに悪影響を及ぼすだろう」と述べた。

 ドイツのハンブルク大学(Hamburg University)のウォルフガング・メンニッヒ(Wolfgang Maennigt)教授は「W杯や五輪の経済効果について多くの研究が行われているが、効果は一時的なものにとどまるとの見方が大半だ」と話す。「(06年にW杯が開催された)ドイツでは当初、高い期待が寄せられたが、結局、最後には『素晴らしい大会だったし、とても楽しかった。でも経済的に得るものはあったか?いや、何もないね』と皆が口を揃えた」と説明した。

 メンニッヒ教授によると、サッカーの伝統と何の関係もない都市に新しいスタジアムを建設することは、「政治的な観点からは理解できるが、純粋に経済の観点からはとんでもないこと」だという。

 同教授はまた、昨年6月のコンフェデレーションズカップ2013(Confederations Cup 2013)開催中に起きた大規模なデモが再発すれば、ブラジルの国としてのイメージが低下し、経済効果が台無しになる可能性があると指摘している。(c)AFP/Chris WRIGHT