【6月2日 AFP】重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory SyndromeSARS)と中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)の研究を行う国際研究チームはこのたび、感染症を引き起こすコロナウイルスに対して効果を持つ化合物を特定したと、米医学誌『PLoS Pathogens』に発表した。現在点で、これら感染症の治療法は存在しない。

 スウェーデン・ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)のエドワード・トリバラ(Edward Trybala)氏とスイス・ベルン大学(University of Bern)のボルカー・ティール(Volker Thiel)氏率いる研究チームは、感染者体内でウイルスの増速を阻止するとみられる化合物「K22」を特定したという。

 研究チームは、化合物1万6671種類を調べた。その結果、軽い風邪のような症状を引き起こす、弱い型のコロナウイルスに対して「K22」が効果を持つことを突き止めた。研究チームはさらに、SARSやMERSなど、より強い株に対しての効果を検証すべく研究を続けているという。

 トリバラ氏はAFPに対し、「このウイルスは体内の細胞膜を乗っ取り、自らを守る構造に変えてしまう。こうして増殖のための『ウイルス工場』が作られる」と説明し、「『K22』は、このプロセスの初期段階で作用してウイルスを阻止するため、『新しい治療法への可能性』が開けた」と述べている。

 コロナウイルスは、気道の上部と下部に影響をもたらし、一般的な風邪の約3分の1の原因とされている。2002年に世界的に大流行したSARSは、より強いコロナウイルスの新種の株が原因とされており、コウモリにその起源をたどることができるという。一方のMARSウイルスは、2012年に見つかった新しい株で、ラクダが発生源と考えられている。(c)AFP