【5月27日 AFP】ベルギーの首都ブリュッセル(Brussels)にあるユダヤ博物館(Jewish Museum)で発生し世界中に衝撃を与えた発砲事件で、これまで単独の実行犯を追っていた警察当局は26日、「テロリスト」が関与した可能性を視野に入れた捜査を開始した。

 3人が即死、若い男性1人を脳死状態にしたこの事件の捜査は当初、殺人と謀殺(計画的な殺人)未遂の容疑で進められていた。しかし26日になって、捜査はテロ案件を取り扱う連邦検察庁に移譲され、同庁の報道官は本件の捜査が「テロリスト」による暗殺という線で開始されたと発表した。

 同報道官は記者会見で、警察が分析した博物館の防犯カメラの映像から「平然と…確固たる決意を持って殺害に及んだ男の姿」が浮かび上がったとして、「これらの事実に加え、銃撃の時間が1分半にも満たなかったことから、テロの動機があった可能性があると判断するに至った」と述べた。

 またこれに先立ち、Ine Van Wymersch次席検事は連邦検察庁が捜査を行うことになったことについて、「被害者の身元と国籍」に基づく判断だと明かしていた。

 死亡したのは、イスラエル人でいずれも50代の男性とその妻。2人とも政府機関で勤務していたとされる。

 ベルギーとイスラエルの報道によると、殺害された男性は「ユダヤ人連絡庁(Nativ)」での勤務経験があるといわれている。同庁は、旧ソ連からのユダヤ人移住を秘密裏に支援する役割を果たしており、イスラエルの対外特務機関モサド(Mossad)や治安機関シンベト(Shin Bet)同様、首相府に属していた。

 犠牲者は4人全員が顔と首に銃弾を受けていた。このうち博物館の職員だったベルギー人男性については、ユダヤ教指導者らは25日に死亡したと話していたが、Van Wymersch次席検事によると、まだ生存はしているものの「臨床死」状態にあるという。

 また犯人が、2012年にフランス・トゥールーズ(Toulouse)で複数のユダヤ人を殺害し、警察に射殺されたモハメド・メラ(Mohamed Merah)容疑者と同じように、犯行の様子を撮影できるよう、持っていた2つのバッグのうちの1つにカメラを取り付けていたという報道が出ていることについて、Van Wymersch次席検事はその真偽の言明を避けた。(c)AFP/Claire ROSEMBERG, Catherine BOITARD