【5月26日 AFP】中国当局の検閲と対峙(たいじ)することは、太極拳をするのに似ている――中国の著名な映画監督、賈樟柯(ジャ・ジャンクー、Jia Zhangke)氏がAFPのインタビューに語った。

 25日に閉幕した今年のカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で審査員を務めた賈氏は、自国の検閲当局との関係の難しさを率直に口にした。世界的に高く評価された監督作『罪の手ざわり(A Touch of Sin)』も、中国国内ではまだ公開されていない。

 賈監督は、今後制作する作品が自国で公開されるための機会を探り、日ごろから当局と接点を持つようにしているが、それは「協力ではなく接触」だという。「太極拳をご存知ですか?こちらから接触して初めて、相手はこちらの力を感じ取る」

「自分の映画を自分の国で発表する権利と機会をあきらめられる監督などいない。私も当局との話し合いを続けていくため、多くの時間と忍耐を費やさなければならない」

 中国当局は、政治的な言論を厳しく統制しており、微妙な問題を扱っているとみなした映画については、公開を遅らせたり、完全に上映を禁止することも少なくない。

『罪の手ざわり』は激動の真っただ中にある中国──腐敗した役人やごろつき、香港(Hong Kong)や台湾からやって来る貪欲な実業家らが幅を利かし、破壊された中国社会を大胆に描き出した作品。昨年のカンヌで脚本賞を受賞したこの作品の国内公開に向けて賈監督は奔走し、いったんは当局に承認され、今年11月の公開を目指していた。しかしその許可は取り下げられ、事態は今も進展していない。

 賈監督の最新作は、出身地の中国北部山西(Shanxi)省とオーストラリアを舞台にした「山河故人(英題、Mountains May Depart)」。国外での初めての撮影も敢行した同作の国内公開については、うまくいってほしいと語った。(c)AFP/Marianne BARRIAUX