【5月26日 AFP】体内でのマラリア原虫の増殖阻害に関連している可能性がある「抗原タンパク質」を発見したとする研究論文が、22日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。この発見により、今後のワクチン開発に新たな希望がもたらされるかもしれない。

 マラリアによる死者数は毎年60万人以上に上り、サハラ以南アフリカ地域の幼児が特にその犠牲となっている。新たに発見されたタンパク質は、最も重症型のマラリアをめぐる研究において、科学者らの助けになる可能性がある。

 米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious DiseasesNIAID)の研究チームが発表した論文によると、体内に存在することによって人体による抗体の形成を促進する「PfSEA-1」と命名されたこのタンパク質は、マラリアが風土病となっているアフリカの一部地域の子どもと大人の多くで「原虫濃度」が減少したことに関連しているという。

 実験では、このタンパク質を投与したマウスに血液中の原虫濃度の減少がみられた。

 PfSEA-1の発見により、今後の開発が期待されるマラリアワクチンで使用される抗原の数は増加する可能性があると研究チームは述べている。

 PfSEA-1によって生成される抗体は、マラリア原虫が別の赤血球に侵入するために寄生した赤血球から出るのを阻止し、増殖を阻害する。

■自然の免疫反応

 マラリアが日常的に発生する地域に住む人々は、血液中に含まれる原虫の数を制限して、高熱などの重度の症状を防ぐ自然の免疫反応を発現させている場合が多い。

 今回の研究は、タンザニアの2歳児で、マラリアに耐性を示す幼児とマラリアにかかりやすい幼児から採取した血液サンプルに基づいている。

 遺伝子分析と一連の臨床検査を行った結果、研究チームはPfSEA-1を特定し、赤血球に侵入した後のマラリア原虫による感染をPfSEA-1が阻止することを確認した。

 次に研究チームはPfSEA-1を用いて5グループのマウスにワクチン接種を行い、PfSEA-1は原虫濃度を下げ、ワクチンを接種しなかったグループよりもマウスを長生きさせる効果があることを明らかにした。

 研究チームはまた、タンザニアの幼児453人から採取した血漿(けっしょう)サンプル中の抗体濃度を測定し、検出可能な濃度のPfSEA-1抗体が血液中に存在する場合は重症マラリアの症状が全くみられないことを発見している。

 また、ケニアのマラリア発生率が高い地域に住む12~35歳の男性138人から採取した血漿サンプルを分析し、検出可能な微量のPfSEA-1抗体を持つ人々は、抗体を持たない人々に比べて原虫濃度が50%低いことを研究チームは明らかにした。(c)AFP