【5月27日 AFP】インドネシア南部のスンバ(Sumba)島で農業を営む一家が、小屋の外で電球の明かりに照らされながらトウモロコシの穂軸を食べている。女性は織物をして、若い男たちは携帯電話で遊んでいる。

 人口65万人のスンバ島のKamanggih村では2年前までほとんどの世帯で電化率がゼロだったが、今は近くの川に設置された小規模の水力発電装置から300世帯に、24時間、電気が供給されるようになった。

 村の住民、アドリアナさんはAFPに「これまでずっと川を生活用水のために使ってきたけれど、川の水が電気を供給してくれるなんて知らなかった」と話した。小屋の中からは、80年代の米国のポップソングが聞こえた。カセットプレーヤーを使っているのだ。

 スンバ島は2025年までに、全体の発電量に占める再生可能エネルギーの割合を100%にすることを目指しており、太陽光、風力、水力に加え、豚のふんも発電に利用している。

「アイコニック・アイランド(Iconic Island)」と呼ばれるこの野心的なプロジェクトは、オランダの非政府組織(NGO)「Hivos」によって始められたもので、今後10年間でインドネシア全体の発電量に占める再生可能エネルギーを約2倍に引き上げる国家戦略の一部になっている。

 スンバ島は貧しい島で、人々は農業や漁業で生計を立てている。電気が使えるようになってから人々の生活は大きく変化した。アドリアナさんは「子どもたちは夜も勉強できるようになった。私はこれまでより長い時間、籠や敷き物を織って、市場で多くの物を売れるようになった」と話す。

 政府の統計によると、スンバ島で電気を使えているのは人口の約30%。使用されている電気の50%超は再生可能エネルギーだ。このプロジェクトは、すべての地域が、環境負荷の大きい石油や石炭などのエネルギーを利用する過程を経ずに、初めから環境に優しいエネルギーを使うようになることを想定している。