■日本などとの海洋紛争で募る不満

 米政府関係者らは、今回の法的措置は長年の準備を経たものだと話しているが、このところ中国は、国際基準の尊重を求める米国の要請をよそに、日本、ベトナム、フィリピンとの海洋領有権紛争において、強引で一方的な動きを進めている。

 大半の国では、領海の基線から200海里(約370キロ)以内の排他的経済水域(EEZ)でも外国船舶が自由に航行しているが、中国はEEZ内の外国船舶に対する法的権限を主張しており、米国からの警告を招いている。

 過去に米政府のアジア政策立案を担い、現在は米シンクタンク「カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)」の副署長を務めるダグラス・パール(Douglas Paal)氏は、今の中国をこう見ている。「中国は、自分たちが順風満帆で台頭しており、われわれ(米国)が落ち目だと思っている。そして、第2次世界大戦が終わったときに米国がルールを打ち立てたように、そのうち自分たちがルール作りを始めようと思っている」

 米国には、中国にどの程度配慮すべきかという、さじ加減の難しい使命が課されているという。パール氏いわく、米国は次のようなメッセージを発してきた。「貴国のためにルールを変えよう。例えば国際通貨基金(IMF)での投票権を増やそう。しかし、外に出て行って、海洋法を変えることはできない」