【5月20日 AFP】ロケット発射台や宇宙飛行士の訓練センター、歴史的な宇宙ミッションを送り出してきた数十億ドル規模の施設など、米航空宇宙局(NASA)が所有する施設のほとんどが海面上昇による危機に直面していると警告する報告書が20日、発表された。

 NASAでは米フロリダ(Florida)州ケープカナベラル(Cape Canaveral)のケネディ宇宙センター(KSC)から、テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)の管制センターまで可能な限り護岸を築き、施設の一部を内陸側に移動させる措置をとっている。

 NASAの主要施設7か所のうち、5か所が沿岸に位置している。専門家によれば、ロケット打ち上げや宇宙船の試験のため海の近くに位置することが後方支援上、不可欠なのだという。

 今回発表された米科学者団体「憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)」の報告書は、すでに海水の浸入、海岸の浸食、強力なハリケーンなどで多くのNASA施設が大きな被害を受けていると指摘する。

 NASAの象徴ともいえるケネディ宇宙センターの発射台からは、過去30年間にアポロ(Apollo)月探査ミッションの月着陸船や多数のスペースシャトルが打ち上げられてきた。このケネディ宇宙センターが今後も運営を続けていく上で唯一最大の脅威は、海面上昇だと報告書は述べている。

 報告書は、同じく海面上昇の脅威にさらされている米国内の象徴的な場所として、ニューヨーク(New York)州の「自由の女神(Statue of Liberty)」や、北米大陸初の英植民地となったバージニア(Virginia)州のジェームズタウン(Jamestown)、サウスカロライナ(South Carolina)州の歴史的都市チャールストン(Charleston)などを挙げている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN