【5月16日 AFP】南仏カンヌ(Cannes)で開幕した第67回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で14日、審査員長を務めるジェーン・カンピオン(Jane Campion)氏は女性監督が少ないのは業界「特有の性差別」のためだと批判した。映画業界でトップを担う女性が少ない現実に近年、非難する声が強まっている。

 ニュージーランド出身の監督・脚本家のカンピオン氏は、同映画祭の最高賞パルムドール(Palme d'Or)の受賞経験がある唯一の女性監督。今年の映画祭開幕に当たってカンピオン氏は報道陣に対し、「この業界には、ある特有の性差別が現存すると言わざるを得ない」、「極めて非民主的に感じるし、女性たちも気付いている。どれだけ時を経ても私たち女性に取り分は回ってこない」と述べ、おいしいところは全部、男性が持って行ってしまうように思えると付け加えた。

 カンピオン監督は、1993年の『ピアノ・レッスン(The Piano)』でパルムドールを受賞。米アカデミー賞(Academy Awards)でも同賞史上、監督賞にノミネートされた、わずか4人の女性監督の1人で、複雑な感情と強い意志を持った女性描写で高い評価を受けている。

 カンピオン監督は、今日の映画業界では女性があまりに少ないために、女性の監督が「より女性的な視点」を提示すると世界に驚きを持って受け止められる傾向にあると語っている。

 カンピオン監督の最新作はテレビのミニシリーズ『トップ・オブ・ザ・レイク(Top of the Lake)』で、故郷に帰った女性捜査官が児童虐待事件の捜査に関わっていくというストーリー。高視聴率を取り、複数の賞も受賞している。

 米カリフォルニア(California)州のサンディエゴ州立大学(San Diego State University)に拠点を置く「テレビ・映画業界の女性研究センター(Centre for the Study of Women in Television and Film)」のマーサ・ローゼン(Martha Lauzen)氏はAFPの取材に、女性監督の不足については頻繁に取り上げられはするが、実態は改善されるどころか悪化していると指摘する。

 同センターの調査によると、昨年の米映画の興行成績トップ250作品のうち女性監督によるものはわずか6%で、1998年の9%からさらに減っているという。

 今年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを競うコンペティション部門の18作品でも、女性は日本の河瀬直美(Naomi Kawase)監督(『2つ目の窓(Still the Water)』)とイタリアのアリーチェ・ロルヴァケル(Alice Rohrwacher)監督(『ル・メラビジル(The Wonders、原題:Le Meraviglie)』)の2人のみ。なお昨年は1人、2012年には1人もいなかった。

 今年カンヌに出品された1700作品全体でも、女性監督が手掛けた作品は7%だけとなっている。

 映画祭の主催者は問題は認識しているとした上で、作品の純粋な評価以外に別の要素を加えるならば、それはかえって女性監督たちに対する侮辱に当たるのではないかと述べた。(c)AFP/Helen ROWE