【5月14日 AFP】第67回カンヌ国際映画祭の開幕直前、新人監督からハリウッド(Hollywood)の大物まで、数多くの関係者が続々と南仏カンヌ(Cannes)入りする様子を涼しげな様子で見下ろすのは、イタリアの色男マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni)だ──。

 サングラス姿のマストロヤンニの巨大ポスターが掲げられたのは、現地時間14日に開幕するカンヌ国際映画祭メイン会場入り口。その下に敷かれたレッドカーペットには、12日間の映画祭開催期間中、映画スターら多くのセレブが登場する。

■参加予定のスターたち

 映画祭のオープニングを飾るのは、物議をかもしているニコール・キッドマン(Nicole Kidman)主演の伝記映画『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札(Grace of Monaco)』だ。18日には、『エクスペンダブルズ3(The Expendables 3)』のプロモーションが行われ、キャストのシルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)、ハリソン・フォード(Harrison Ford)、アーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)らが戦車で登場する予定となっている。

 最高賞のパルムドール(Palme d'Or)を決めるコンペティション部門には18作品が選出されている。そのうちの1本、ケン・ローチ(Ken Loach)監督の『Jimmy's Hall』は、77歳の同監督にとって最後の長編映画になる可能性がある。

 その他、コンペ部門には83歳のジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督、25歳のカナダの若き天才グザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan)監督、俳優として出演した「メン・イン・ブラック(Men in Black)」シリーズなどで知られるトミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)監督の作品が並ぶ。

 またライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)も、ある視点部門に出品される監督デビュー作『Lost River』をひっさげ、カンヌにやってくる。

 閉会式では、マカロニウエスタン誕生から50周年を記念して、クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)がクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)主演の『荒野の用心棒(A Fistful of Dollars)』を紹介する。

■期間中の街は映画祭一色

 カンヌ国際映画祭は、芸術性を重視しながらも豪華絢爛な映画祭として知られている。毎年、多くの映画スターや業界の実力者、メディア関係者に加え、映画ファンなどの一般人も押し寄せるため、映画祭期間中、7万3000人のカンヌの人口は約3倍の20万人以上に膨れあがる。

 この時期スイートルームの宿泊費は数万ユーロに跳ね上がるが、海沿いにある高級ホテルにはセレブたちが多く集まる。カールトン(Carlton)ホテルには、審査員長のジェーン・カンピオン(Jane Campion)が宿泊し、9人の審査員は開幕前日、ミシュランレストラン「ラ・パルム・ドール(La Palme d'Or)」で夕食を取る。

 治安態勢強化の面では、昨年起きた宝石強盗のような犯罪行為を防ぐために、700人近い警官が配備された。他方、街中には何千本もの植物が新たに植えられ、プライベートビーチには期間限定のナイトクラブやおしゃれなレストランがお目見えした。映画祭開催期間中、ホテルのスイートルームは予約したファッションブランドによってショールームへと姿を変える。

 期間中は映画上映のほか、製作者と配給会社による新作の配給交渉なども行われ、ホテルは年間の売上の15%を期間中に稼ぎ出す。映画祭の開催にかかる費用は総計2000万ユーロ(約28億円)だが、観光業や商取引などでそれ以上の利益を生み出す。

 また、最も重要なレッドカーペットは、期間中毎日、1日に少なくとも2回は交換される。そして一度使われたカーペットは、車のマットとして再利用される。(c)AFP/Céline AGNIEL