【5月14日 AFP】熱帯地方の沿岸都市を海面上昇から守るための手段として挙げられるコンクリート製の防護壁とサンゴ礁だが、コスト面ではサンゴ礁に軍配が上がるとした研究論文が、13日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 論文を発表した米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)のマイケル・ベック(Michael Beck)氏率いる研究チームは、防波堤や護岸の建設に数十億ドル投資するよりも、現存するサンゴ礁の保全と再生を多くの熱帯都市は検討するべきと指摘した。

 研究チームの試算によると、サンゴ礁は、波によって海岸線に伝えられるエネルギーの最大97%を消散させるという。

 波のエネルギーの86%は、礁嶺(しょうれい)と呼ばれるサンゴ礁の海側の外縁部で消散され、残りのエネルギーの約3分の2は、海岸から沖側に向けて広がるサンゴ礁の浅瀬部分の礁原(しょうげん)によって弱まる。

 論文によると、この自然の防護体は波の高さを平均64%減少させ、離岸堤によって得られる30~70%の波高の減少に匹敵する効果があるという。

 ベック氏の研究チームが行ったコスト面での大まかな分析によると、熱帯地方の防波堤建設プロジェクトには平均1億9700万ドル(約201億円)の費用がかかるのに対し、サンゴ礁の保全・再生費用は1億2900万ドル(約132億円)に抑えることができるという。

 さらに、長期的な費用の面でも利点がある。「サンゴ礁には自己修復能力があるため、維持費は人工構造物に比べて低くなる可能性がある」と研究チームは付け加えた。

 論文によると、サンゴ礁による防護で、海抜10メートル未満の沿岸地域に住む約1億人の人々が恩恵を受ける可能性があるという。

 インドネシア、インド、フィリピンで全受益人口の半数を占めており、米国もこの受益国の上位10か国に入っていると考えられる。