【5月8日 MODE PRESS】

■「究極の普通」が今年の流行

 今、アメリカで話題の“Normcore(ノームコア、以下ノームコア)”という流行語をご存知だろうか。普通を意味する「Normal」とハードコアの「core」を組み合わせた造語で、日本語に訳すと「究極の普通」といった具合になる。端的に言えば、トレーナーとジーパンにスニーカーなど、ハイファッションではなく、個性を主張しない“普通すぎる”服装に徹底的にこだわることだ。この「ノームコア」はSNSなどで急速な広まりを見せ、今や世界のファッション業界を震撼させそうなキーワードになってきている。なぜ“究極の普通”がファッション界を変えようとしているのか。

 「ノームコア」はニューヨークのK-Holeというトレンド予測集団が提唱したもので、ニューヨーク在住のライター、フィオナ・ダンカンによる『ニューヨークマガジン』の記事「Normcore: Fashion for Those Who Realize They’re One in 7 Billon(自分が70億分の1であることを自覚した人のための服装)」で一気に火がつき、バズワードとなった。

 日本でも瞬く間に話題になり、コンセプターの坂井直樹氏(参考:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38908)やジャーナリストの佐々木俊尚氏(参考:http://crea.bunshun.jp/articles/-/5118?tw )などの知識人がブログでとりあげている。明治大学特任教授でありエッセイストでもある中野香織氏は、ノームコアを自身のブログ「<次なるトレンド“ノームコア”って何?!>ファッショニスタが「筋金入りの普通」に注目」(2014年3月13日付け)の中で、「筋金入りの普通」と訳す。

 中野氏はファッション愛好者がカジュアルに装い始めていることについて「ファッションで個性を主張しようなどというプロパガンダが行き渡るあまり、見渡せば、どいつもこいつもおしゃれで小ぎれいになり、結局、なんだか同じに見える。みんながみんなファッションに気を遣うあまり、かえって没個性になってしまうという皮肉。そんな砂漠のような虚しいファッションシーンに疲れ果てた人が、ファッションに無頓着な(と見える)ノームコアにほっと安心を覚えるのは無理からぬ話です」と語る。
※参考:http://japan-indepth.jp/?p=4216

 その今年最初の世界的流行語となりそうな「ノームコア」を大きく取り上げたジャーナリストのフィオナ・ダンカンに直接連絡を取り、メール・インタビューを実地。「究極の普通」が流行る背景を伺った。