【5月7日 AFP】クモのゲノムを初めて解読したとする研究論文が、6日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。今後、高性能な殺虫剤の開発や、人工のクモの糸の開発などが期待されるという。

 デンマークのオーフス大学(Aarhus University)のトリネ・ビルデ(Trine Bilde)氏率いる生物学研究チームが解読したのは、クモの主要な2分類を代表するタランチュラとイワガネグモのDNA配列。

 タランチュラの属するトタテグモ下目は地面を歩行して捕食するタイプのクモ。一方、イワガネグモの属するクモ下目は地上を離れて暮らし、共同体を形成したり、いわゆる「クモの巣」を作って捕食をしたりするタイプだ。

 生物学者たちはこれまで、クモの高効率の生存能力に魅了されてきた。クモはエネルギー消費量を最低限に抑えつつ、自重の7倍もの大きな相手を捕食することができる。

 一方、化学者は別の側面に関心を寄せている──クモの糸だ。クモの糸は鋼鉄やケブラー繊維の何倍もの強度のある複合タンパク質で、化学者はこの複製方法を模索している。また、特定の昆虫だけを殺すクモの神経毒を利用して、従来よりも選択的に作用するより環境配慮型の殺虫剤の開発にも期待が寄せられている。

「我々は今回の研究を通じて、神経毒のタンパク質については、特定の標的に対して使える可能性のある多様性を、またクモの糸については、さまざまな糸の種類の完全な配列を提供した。これは細菌性細胞の内部でクモの糸を培養する研究などに役立つ可能性がある」と、研究者のジェスパー・ベックスガード(Jesper Bechsgaard)氏は語った。(c)AFP