■大きな発見のチャンスも眠る

 内戦で疲弊したスーダンを昨年訪れた観光客は60万人に満たなかったが、彼らを引きつける数少ない観光地の一つが、エルクッルなどの古代遺跡だ。それに比べて、ナイル上流に位置するエジプト南部ルクソール(Luxor)の遺跡群には年間何百万人もの観光客が訪れる。

 紀元前900年以降、ナパタを中心に登場した文明の影響力は北のルクソールにまで及び、短期間ながらエジプトを征服した時期もあった。

 ナパタの王ピアンキ(Piangkhi)のピラミッド跡など王家の墓がある広大な遺跡群は、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録されており、これにエルクッルも含まれる。

 初めての発掘が始まってから1世紀が経つ今も、ザルック氏が率いる米スーダン共同チームは、エルクッルの謎を解明しようと努めている。

 今年の発掘シーズンは3月に終わったが、それまでにエルクッル最大のピラミッドから何十トンもの砂やがれきが除去された。高さ約35メートルと推定されているこのピラミッドは、ピアンキ王のピラミッドの隣に位置しており、それはおそらく王の家族のものだからだろうと、米ミシガン大学(University of Michigan)ケルシー考古学博物館(Kelsey Museum of Archaeology)のジェフ・エンバーリング(Geoff Emberling)氏はいう。

 同氏のチームはこのピラミッドの近くで、20本以上の柱を持つ建物も発掘している。亡くなった王に礼拝を捧げるための埋葬殿とみられる建物だ。「美しく、いい状態で保存されている建物だが、いつ建造されたのか、決定的な証拠はつかんでいない」と、エンバーリング氏はAFPに語った。「スーダンには考古学者にとって興味深く価値のある遺跡が眠っている。周辺の有名な古代文明に比べて、ナイル川中域は考古学的にあまり解明されていない。だからこそ、ここは大きな発見のチャンスを与えてくれる」(c)AFP