【5月4日 AFP】体重が180トンもあり、体内に充満したメタンガスによる爆発で悪臭を放つ内臓が町中に飛び散りかねない希少動物シロナガスクジラの死骸を、一体どのように処理すれば良いか――カナダ東部ニューファンドランド(Newfoundland)島トラウトリバー(Trout River)の住民600人は、体長25メートルの死骸が先月25日に海岸に打ち上げられて以来、このただならぬ問題に頭を抱えてきた。

 死骸爆発の可能性には海外の関心も高まっており、死骸が今度どうなるか追跡している「hasthewhaleexplodedyet.com(クジラの爆発はまだか)」と称するウェブサイトまで開設された。腐敗が進行している死骸はガスによって通常の2倍に膨張しており、爆発の危険が指摘されている。町職員のエミリー・バトラー(Emily Butler)さんは先月29日、AFPに対して死骸爆発への不安感を表明するとともに、北大西洋沿岸の小さな町であるトラウトリバーには死骸の安全処理に必要な資源が不足していると語った。

 政府当局は当初協力に二の足を踏み、死骸を自然に腐敗させるべきだとの考えを示した上で、船舶航行の妨げになるとして死骸を海に戻さないよう住民に警告していた。ただ、その後ゲール・シェー(Gail Shea)漁業海洋相が、トロント(Toronto)のロイヤルオンタリオ博物館(Royal Ontario Museum)の研究者らが来週トラウトリバー入りし、死骸を回収すると発表。ロッキーハーバー(Rocky Harbour)に打ち上げられたもう一体のシロナガスクジラの死骸も回収するとしている。

 この2体のクジラの死骸は、厚い海氷に覆われたニューファンドランド南西沖で数週間前に死んだ9頭のうちの2頭とみられている。

■研究者にとっては「好機」

 クジラの死骸が住民から鼻つまみにされ、心ならずも注目の的になっている一方で、研究者は(クジラにとって)不運ながら、滅多にない好機が到来したと判断している。シェー漁業海洋相は、シロナガスクジラが地球で有数の大型動物であることを説明した上で、「北大西洋の成年のシロナガスクジラ生息数は250頭未満。骨格2つを保護して研究調査を行うのは、一生に一度あるかないかのチャンスであり、カナダ人にとっては科学教育面で大きな価値がある」と強調した。