【5月1日 AFP】英国・北アイルランド(Northern Ireland)のカトリック系民族主義政党シン・フェイン党(Sinn Fein)は、ジェリー・アダムズ(Gerry Adams)党首(65)が1日現在、1972年の女性殺害事件をめぐって警察の聴取を受けていると発表した。

 シン・フェイン党が4月30日夜に党の公式ウェブサイトに掲載した声明によると、アダムズ党首は3月、ジェーン・マコンビル(Jean McConville)さん(当時37)殺害事件に関連して北アイルランド警察当局の聴取に応じる意思を表明しており、30日にその聴取が行われたという。

 北アイルランド警察は、アダムズ党首がアントリム(Antrim)の警察署に出頭したため逮捕したことを認めた。24時間以内に釈放か起訴、または勾留請求を行うことになるという。

 アダムズ党首は事件への関与を一貫して否定している。

 10歳の子の母親だったマコンビルさんは1972年、ベルファスト(Belfast)西部のアパートから拉致され、射殺された。英国軍に情報を提供したとの誤解を受けたためだった。1999年にカトリック過激派アイルランド共和軍(IRA)が犯行を認め、その4年後にアイルランド東部ラウス(Louth)州の海岸で遺体が見つかった。

 英国による北アイルランド統治に反対するIRAは、かつて30年にわたり、英国統治の継続を望むプロテスタント系の組織や住民を標的とする爆破事件や銃撃事件を繰り返してきた。アダムズ党首は1983年からIRAの政治組織として発足したシン・フェイン党の党首を務めているが、現在IRAの主流派であるIRA暫定派(Provisional IRA)の正式メンバーだったことはないと主張している。

 IRAの武装闘争は、1998年の和平合意によってほぼ終焉し、プロテスタントとカトリックが共同で運営する北アイルランド議会設置に道が開かれた。IRAは2005年に武装闘争終結を宣言。アダムズ党首は、英国政府との和平交渉において主要な役割を担ってきた。

 マコンビルさん殺害事件では、これまで殺人容疑で有罪となった人物はいないが、3月にアイバー・ベル(Ivor Bell)元IRA司令官(77)が事件をほう助したことを認め、訴追された。(c)AFP/Peter MUHLY