【5月1日 AFP】4月18日の雪崩で一度の事故では過去最多の死者が出た世界最高峰エベレスト(Everest、8848メートル)。夢を断たれ、大きな犠牲が払われるのを目の当たりにした多くの外国人登山家らは、もう二度とネパール側からエベレスト登頂を目指すことはないかもしれないと口をそろえる。ベースキャンプで見苦しい光景を目の当たりにし、政府の管理ミスとみられる事態に多くの登山家らが動揺しているというのが実情だ。

 エベレスト登頂には、ネパール側からのルートが最も楽で人気がある。しかし事故を受け、今季の登山は事実上、完全に閉鎖されてしまった。

 ネパール人の登山ガイドら13人が死亡、3人が行方不明となった事故を受け、ガイド側と政府との間で労働争議が発生してガイド側が登山中止を宣言したため、外国から訪れた登山隊らは登頂計画を断念せざるを得なくなった。

 米国人の登山家、ロバート・ケイ(Robert Kay)さん(52)は、2010年と2013年にもエベレストに挑んだものの悪天候のためやむなく引き返しており、今季は三度目の正直で頂上到達を目指していた。個人トレーナーを2人雇い、4万ドル(約400万円)以上を費やすなどして今回、登山に臨もうとしていた。

■「ネパールのイメージダウン」

 エベレストのベースキャンプから戻ってきた経験豊富な登山家らの話では、現場は張り詰めた空気で、昨年欧州の登山家3人と地元ガイドの一団が乱闘騒ぎを起こして登山関係者らの間に衝撃が走った時の記憶がよみがえったという。

 今回の事故で、外国人客の代わりに地元ガイドらが負うリスクの大きさが改めて浮き彫りになり、死亡・負傷時の補償給付金の引き上げ要求がますます強まった。当初政府が遺族に対して弔慰金として提示した額は400ドル(約4万1000円)で、現在ガイド側と政府との間で条件改善交渉が行われている。

 ネパールはエベレストへの登山料として年間300万ドル(約3億円)の収入を得ている。

 当局者らは、通常最低でも1万1000ドル(約113万円)を支払って登山許可証を取得している外国人に対し、許可証の有効期間を5年間延長すると約束しているが、いら立ちをみせる多くの登山家は、代わりに中国側からのルートで頂上を目指そうと考えているという。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY