【4月30日 AFP】クローン技術を用いて糖尿病患者の女性の遺伝子を持つ胚性幹細胞(ES細胞)を作製し、それをインスリンを生成するβ(ベータ)細胞に変えることに成功したとの研究論文が、28日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。このベータ細胞によって、患者の糖尿病が治る日が来るかもしれない。

 米国とイスラエルの国際研究チームは、病気の治療に使用するための「個人に特化した幹細胞」作製方法を模索する上で重要な関門を突破したと報告した。

 研究を率いた米ニューヨーク幹細胞財団(New York Stem Cell FoundationNYSCF)のディーター・エグリ(Dieter Egli)氏は「糖尿病患者自身のインスリン生成細胞を用いて治療が行えるようにするという目標に向けて一歩前進した」とコメントしている。

 エグリ氏の研究チームは、患者の女性の皮膚から採取した細胞の核をヒトの卵細胞に移植して幹細胞を作製し、ベータ細胞に変化するように誘導した。ベータ細胞の不足は、インスリンの欠乏や高血糖など、糖尿病の症状を引き起こす。

 研究チームは今回、将来の細胞置換療法に向けた潜在的に重要な出発点を確立した。

 同様の手法を用いた幹細胞の作製は以前から行われていたが、特定の治療に用いるための細胞を作るという目的で、成人の患者から採取した細胞が使用されたのは今回の研究が初めてだという。

 人体の分化した組織細胞の大半に進化させることが可能な中性の未発達細胞であるES細胞は、病気や事故で損なわれた臓器の再建を可能にする可能性を秘めているとみなされている。

 ES細胞は、個人の卵細胞からDNA含む核を取り除き、皮膚などの組織から採取した細胞の核を移植して作製する。

 核が移植された卵細胞は、電気パルスを与えると分裂を始め、組織細胞提供者のDNAを持つ約150個の細胞でできた「胚盤胞」という中空の初期胚を形成する。