【4月23日 AFP】牛糞堆肥は野菜の栽培によく使われているが、ウシの糞には微生物の抗生物質耐性を高める可能性のある多様な遺伝子が含まれていることが22日、米エール大学(Yale University)の研究で明らかになった。

 研究結果によると、これらの遺伝子はウシの消化管に存在するバクテリアに由来するもの。これらの遺伝子を持つスーパーバグ(抗生物質が効かない超強力細菌)が、ヒトに感染するようになる恐れもあるという。

 研究チームが米コネティカット(Connecticut)州で4頭の雌牛から採取した糞便サンプル5点を調べたところ、80種の抗生物質耐性遺伝子が見つかったという。研究者らは「その数の多さに驚いた」と話している。

 見つかった遺伝子の約75%はあまり知られていないもので、遺伝子配列の分析によって既知の遺伝子とは遺伝的に遠縁であることが分かった。

 これらの遺伝子を導入した実験室株の大腸菌は、ペニシリンやテトラサイクリンなどのよく知られた抗生物質の一部に耐性を持つようになったという。

 主に成長を促進させる目的で、ウシの4倍もの抗生物質を投与されることもあるニワトリからは、より多くの抗生物質耐性遺伝子が発見されている。

 研究に参加したジョー・ハンデルスマン(Jo Handelsman)教授(分子・細胞・発生生物学)は、「サンプルの数が少ないことを考えると、見つかった遺伝子の種類が多かったこと自体が注目に値すると言える。これらの遺伝子は、遺伝子データベースに登録されている遺伝子とは進化的に遠く離れている。データベースにある遺伝子は大半が、医療分野で見つかる抗生物質耐性遺伝子だ」と指摘している。

 牛糞が抗生物質耐性遺伝子の主要な「貯蔵庫」だと言えるか否かを証明するには、さらなる研究が必要だという。

 研究結果は、米国微生物学会(American Society for Microbiology)が公開しているオープンアクセスのオンラインジャーナル、「mBio」に掲載された。今回の研究はスイス国立科学財団(Swiss National Science Foundation)と米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)の資金提供を受けて実施された。(c)AFP