【4月21日 AFP】韓国南西部・珍島(Jindo)沖で起きた旅客船セウォル(Sewol)号の沈没事故で、韓国当局は20日、乗員が事故発生時に管制センターと交わした交信記録を公開した。交信記録からは、沈没直前の生死を分ける重要な時に、パニックになりうろたえる乗組員が、乗客脱出の決断をためらっていたことが明らかになった。

 珍島海上交通管制センター(Vessel Traffic ServicesVTS)との交信記録によると、セウォル号が傾き始め転覆する直前、セウォル号の乗組員の1人は、同センターに対し「傾いている。沈没しそうだ」「船体が傾きすぎて身動きできない」と伝えた。

 また、同じ乗組員は別の交信で、放送システムが壊れているため乗客へ指示を与えることができないと話した。それでも管制センターが救命胴衣の着用を乗客に指示するよう伝えると、同乗組員は「脱出させたらすぐ救助できるのか」と聞き返した。管制センター側は「救命浮輪でもいいから着せて、浮かせて。早く!」と乗組員に迫っている。

 数百人の乗客を船内に残したままセウォル号が沈没したことをめぐっては、沈没し始めた時点で乗客への迅速な避難指示がなかったことが致命的なミスとなった可能性が高く、乗組員らには激しい非難が集中している。交信記録が公開されたことで、悲しみにくれている乗客の家族らの怒りがさらに募ることは必至だ。

 海洋警察によると、21日午前までに船内から24人の遺体が収容され、死者は64人、安否不明者は238人となった。船が沈没した際に174人が救出されているが、16日以降に新たな生存者は発見されていない。

 なお19日には、イ・ジュンソク(Lee Joon-Seok)船長、操舵手と、実務経験の少ない3等航海士の計3人が、職務怠慢と乗客の安全確保を怠った容疑で逮捕されている。 (c)AFP