【4月21日 AFP】ウクライナ東部の親ロシア派勢力は20日、同日に起きた銃撃戦で少なくとも2人の死者が出たことを受け、ロシアに「平和維持軍」の派遣を要請した。

 親ロシア派側の説明によると、同国東部スラビャンスク(Slavyansk)市近郊に親露派が設置した検問所で同日未明、4台の車で乗り付けた武装集団が発砲を始め、銃撃戦に発展。親露派側に3人の死者が出たという。現場のAFP記者は現場近くでトラックに乗せられた2人の遺体を確認した。

 武装集団の正体は不明だが、同市の分離派指導者、バチェスラフ・ポノマリョフ(Vyatcheslav Ponomarev)氏は、同集団側にも2人の死者が出たと話している。

 同氏は、午前0~6時までスラビャンスクに外出禁止令を宣言。さらに、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領に向け「ファシストから住民を守るための平和維持軍として」軍隊を派遣するよう訴えた。分離派はウクライナ暫定政権とその支持者らを「ファシスト」と呼んでいる。同氏はさらに、「平和維持軍が送れないなら、武器を送ってほしい」とも要請した。

 復活祭(イースター)の休戦を打ち砕いたこの銃撃戦について、ロシア政府は「激しい怒り」を表明。地元住民らが、襲撃側の車両からウクライナの極右組織「右派セクター(Pravy Sektor)」の武器や衛星地図、名刺を発見したと発表し、同組織の関与を非難した。

 一方の同組織の広報担当はAFPに対し、ロシア政府の主張は「虚偽」であり、ウクライナ東部が暫定政権にとって支配不能な状態に陥っているとのイメージを作り出すための「プロパガンダ」だと主張。暫定政権側も、襲撃事件はロシアが軍隊を送り込む口実を作るために仕組んだものだと主張している。

 17日にスイスのジュネーブ(Geneva)で行われたロシア、ウクライナ、米国、欧州連合(EU)による外相級4者協議では、ロシアと西側諸国との間で冷戦以来最悪の状態まで高まっている緊張関係の緩和を狙い、ウクライナ国内の「違法な武装集団」に対し武装解除を求める合意がなされていた。だが、一触即発の状態となっているスラビャンスク市の近郊で起きた今回の襲撃事件はこの合意を揺るがし、行き詰まりへと追い込んだようだ。(c)AFP/Bertrand DE SAISSET