■逃げ遅れた乗客たち、船内放送で「動かないで」

 セウォル号の事故では、船が座礁した時点で、乗客たちに客室や座席にとどまるよう指示があったとの指摘が複数ある。生存者たちの証言によると、動かないようにとの船内放送が何度も流れたという。

 助け出された生徒の1人は、ほとんどの乗客が座礁後30~40分間、船員や放送の指示に従って座席に座っていたと証言した。生徒たちは「逃げなくて大丈夫かな」と口々に言い合っていたが、船内放送は「10分以内に助けがくる」と告げていたという。

 指示に従った乗客たちは、船体が激しく傾いた時には既に逃げ道がなくなっていたとみられ、この指示が数百人もの生命を危機に追いやったと家族らは怒りを募らせている。

 女子生徒シンさん(18)と父親のメールでのやりとりが、この間の状況を物語っている。

 シンさんから「お父さん、心配しないで。救命胴衣をつけて、みんなと一緒にいるから。まだ船の中です。ホールにいます」とのメールを受け取った父親は必死に、すぐ脱出するよう娘にメールで返信した。だが、遅すぎた。返ってきたメールは「だめ、船がすごく傾いてて出られない。ホールはたくさんの人たちでいっぱい」。これが娘からの最後のメッセージとなった。