【4月16日 AFP】まれな遺伝性疾患である「ゴーシェ病」の治療に使われる酵素を乳に含むヤギを、遺伝子操作で生み出すことにブラジルの研究チームが成功したと、同国紙エスタド・ジ・サンパウロ(O Estado de Sao Paulo)が15日、伝えた。

「グルカ」と名付けられたヤギは、グルコセレブロシダーゼと呼ばれる酵素を生産するために遺伝子操作されたヤギ。南米では初の試みだという。

 ゴーシェ病は、グルコセレブロシダーゼを遺伝的に欠損する疾患で、めまいやあざ、貧血、血小板の減少、肝臓や脾臓の肥大などの症状を起こす。

 治療には薬剤投与と骨髄移植が行われることが多いが、治療後も苦痛が続き、健康面での長期的な見通しはあまり良くないことが多い。

 エスタド・ジ・サンパウロによると、ブラジル国内の同疾患の患者は約600人に上り、海外から輸入される治療薬に年間約1億1300万ドル(約115億円)が費やされているという。

「細胞株を培養するよりヤギを飼育する方が安価に済む。(治療用の)タンパク質の精製方法は基本的に同じだ」と、ヤギのクローンに成功したフォルタレザ大学(University of Fortaleza)の研究者、ルシアナ・ベルトリニ(Luciana Bertolini)氏は語る。

 グルカは3月27日に生まれた。およそ4か月後から乳の生産が可能になる。ベルトリニ氏は「グルカが生産するタンパク質の量を把握し、その効力を試験することになる」と述べた。

 研究が順調に進み、グルカの乳にグルコセレブロシダーゼが多く含まれていることが判明し次第、研究チームはグルカのクローンを作り、タンパク質をより大量に生産する予定だ。(c)AFP