また、クリミア半島にはゲイバーが多数あり、シンフェロポリからそう遠くないシメイズ(Simeiz)の町は、夏にはウクライナ各地から同性愛者が集まるリゾートとして以前から知られている。

「ここでは、私たちにとって良いことなど何も起きない」。同性愛を公表している舞台演出家、アントン・ロマノフ(Anton Romanov)さん(29)は語る。

 ロシア系住民のロマノフさんはエレーナさんと同様、ウクライナからの分離の是非を問う住民投票に参加しなかった。開票結果では、97%近くの賛成により分離が承認された。

 ロマノフさんは現在、クリミアから移住する計画を練っており、ウクライナでの就職の機会を探っているという。

 ロマノフさんはAFPの取材に対し、「ロシアで暮らしたいなんて全く思わない」「僕にとって『寛容』の反意語は『ロシア連邦』だ」と語った。

 また、ロシアの後ろ盾を得ていたビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)前大統領を失脚へと導いた親欧州派による蜂起は、いつの日かウクライナでも同性愛者同士の結婚が認められる日が来るかもしれないという希望をもたらしてくれたという。

 ロマノフさんは笑みを浮かべながら「トンネルの先には光がある」と話した。「けれどもロシアにそんな光はない」

 一方のエレーナさんも、賭けに出るのは嫌だとして、クリミアを去る方法を模索し始めた。

 だが、難民認定を受けるのは簡単ではなく、さらに不動産売買が停止されているためにアパートを売りに出すこともほぼ無理だということも分かってきた。

「私たちは日々、思い悩んでいるんです。ここから出ていくべきか、それとも、とどまるべきかって」(c)AFP/Olivia HAMPTON