【4月11日 AFP】ニューヨーク(New York)の大半の人々はその存在すら知らない──ブロンクス(Bronx)地区の東にある立ち入りが禁止された小島には受刑者らが掘った市の集団墓地があり、そこには約100万人の忘れられた魂が眠っている。

 1869年以来、ハート島(Hart Island)には死産した赤ちゃん、ホームレス、貧しい人々、引き取り手のなかった遺体が、ひつぎ3つ分の深さに重なり合い、眠っている。

 遺体は大きな穴に埋められただけで墓石などはない。白い小さなくいだけが、成人150人分の遺体がそこに埋葬されていることを示している。赤ちゃんや子どもらの遺体は、1つの墓に1000人が一緒に眠っている。

 ここは米国最大の墓地の一つであり、米国で最も人が訪れない墓地の一つでもある。市内ライカーズ島(Rikers Island)にある施設の受刑者らが、穴を掘り、遺体を運ぶ役割を担っている。

 墓地の可視化と立ち入り禁止の解除を求めて活動する「ハート島プロジェクト(Hart Island Project)」の代表を務める美術作家のメリンダ・ハント(Melinda Hunt)さんによると、この島には毎年1500人近くの遺体が到着するという。

■100万人埋葬、撮影・訪問禁止の墓地

 南北戦争(American Civil War)時に墓地として生まれたハート島は、その後、訓練キャンプ、南軍捕虜の収容施設、矯正院、精神科病院、そして冷戦時代のミサイル基地などの目的で使われてきた。

 当局によると、1869年以来、100万人近くの人が、このだれも住んでいない吹きさらしの島に埋葬された。

 だがハート島唯一の桟橋は柵と有刺鉄線に囲まれ、立ち入り禁止を警告する看板が掲げられている。基本、島での撮影は禁止されており、来島には矯正当局(Department of Corrections)の承認が必要とされる。