【4月3日 AFP】国連の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」は3月31日、ヒマラヤ山脈の氷河の半分から3分の2が2100年までに失われる可能性があるとする報告書を発表した。ヒマラヤ山脈の氷河が溶け出した水は、数億人の人びとにとって極めて重要な資源になっている。

 ヒマラヤ山脈の氷河に関する予測は、横浜市で開催されたIPCCの会合で発表された第5次評価報告書(Fifth Assessment Report)に記載されたもの。IPCCは前回報告書でヒマラヤ山脈の氷河が2035年までに消失する可能性があるとの誤った警告を発したことでその評価を下げたが、今回の報告書で再びヒマラヤ山脈の氷河に関する評価を行った。

 IPCCによると、地球表面の平均温度が1.8度上昇した場合、ヒマラヤ山脈の氷河は2006年を基準年として2100年までに45%縮小する。また平均温度が3.7度上昇するというさらに温暖化したシナリオの場合、氷河の縮小は68%に達するという。「この予測は、2035年までに氷河が完全に消失するとした(2007年の)誤った評価よりも信頼性が高いことはほぼ確実である」と報告書は述べている。

■第4次評価報告書の功罪

 2007年に発表されたIPCCの第4次評価報告書(Fourth Assessment Report)は、温室効果ガスの排出が地球の気象系に危険を招くと警告し、気候変動に対する政治的な衝撃をもたらした。同報告書はIPCCのノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)共同受賞に大きく貢献し、2009年の国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate ChangeUNFCCC)第15回締約国会議(COP15)に向けて流れを勢いづけた。

 だが、やがて報告書からいくつかの誤りが発見され、IPCCの評価は損なわれた。その一つが、温暖化が続けばヒマラヤ山脈の氷河が消失するというものだった。IPCCは2010年1月にこの評価が誤りであったことを認めている。また、オランダの海抜以下の地域の判定でも誤りがあった。これらの誤りはその後、温暖化懐疑派により、IPCCの欠陥や偏向の証拠として取り上げられてきた。(c)AFP