【4月2日 AFP】カナダ・トロント(Toronto)郊外で前月28日、銃を持った男が裁判所の建物に侵入し発砲、警察官1人が撃たれたが、居合わせた女性が応急処置を施し、この警察官は一命をとりとめた。男はその場で警察官に射殺された。

 オンタリオ(Ontario)州の特殊捜査班は1日、発砲した男の身元をチャーンジット・シン・バシ(Charnjit Singh Bassi)容疑者(45)と特定。1980年代半ばにカナダに移住してきたバシ容疑者には犯罪歴があったが、現在は同容疑者を対象とした起訴案件はなく、同容疑者には事件当日に出廷する理由はなかった。

 カナダ紙トロント・スター(Toronto Star)がバシ容疑者の友人らの情報として報じたところによると、シーク教徒のバシ容疑者は2度離婚しており幼い娘が1人いた。最近になって、がんを患った母親を介護するために引っ越してきたという。

 目撃者によると事件当日、整った服装のバシ容疑者は警備員のいない弁護士専用の入り口から建物内に入ろうとして、一般入り口に回るよう言われていた。

 一方、バシ容疑者に撃たれ腹部から出血していた警察官に、救急隊が到着するまで圧迫止血法で応急処置を施して一命を救った女性は、リンダ・ハント(Linda Hunt)被告(54)と分かった。ハント被告は事件当日、マリフアナ不法所持の罪で起訴された裁判のために出廷していた。

 ハント被告が応急処置を習ったのは30年も前のことだったという。ハント被告は地元紙トロント・サン(Toronto Sun)に「警察官の体から、どんどん血が噴き出しているのを見てかなり心配になった。すぐに何か処置をしなければ失血してしまうことは明らかだった」と語った。

 ハント被告に救われたマイク・クラレンビーク(Mike Klarenbeek)巡査は現在も入院中だが、順調に回復している。クラレンビーク巡査の家族は、「彼女の助けがなければ、結果は違っていたかもしれない」と、ハント被告に感謝の意を示している。(c)AFP