■歴史の転換点にも焦点

 公文書保管の専門家、デービッド・フェリエロ(David Ferriero)氏は、「署名は本人や当時の状況についてたくさんのことを語ってくれる」と述べる。南北戦争当時のエーブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)大統領は決断力が、19世紀の奴隷解放運動家ハリエット・タブマン(Harriet Tubman)には断固たる決意が、米女優キャサリン・ヘプバーン(Katharine Hepburn)には大胆さが署名から見て取れるという。

 展覧会では、歴史の予期せぬ転換点にも焦点が当てられた。イラクの独裁者だったサダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領は1989年、同じ年に就任したジョージ・H・W・ブッシュ(George H.W. Bush)元米大統領に「丁寧な挨拶」のお礼として署名入りのカードを送った。この2年後、イラクによるクウェート侵攻を受け、米国主導の多国籍軍がイラクへの攻撃を開始した。

 キュレーターのジェニファー・ジョンソン(Jennifer Johnson)さんが、どうしても展示に加えたいと考えたのは、1776年のアメリカ独立の際の宣言書に非常に大きな署名をしたことで有名なジョン・ハンコック(John Hancock)氏の署名だという。米国で「ジョン・ハンコック」は署名と同義語にもなっている。

 現代の世相を映すのは署名を代筆する機械の「オートペン」だ。バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、ホワイトハウス不在の際、期限が迫っていた法案にオートペンを使って遠隔署名をし、共和党議員らから非難を浴びたことがある。

 この展覧会は2015年1月まで開かれている。(c)AFP/Shaun TANDON